【内田雅也の追球】当たり前のことを当たり前に 「凡事徹底」の姿勢が見え、開花の希望が膨らんだ3月9日

[ 2022年3月10日 08:00 ]

オープン戦   阪神2ー2広島 ( 2022年3月9日    甲子園 )

3回の攻守交代時に、初回に送球を背中に当ててしまった菊池涼(右)に謝る秋山
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 当たり前のことを徹底的に行うという意味の「凡事徹底」はカー用品チェーン「イエローハット」の創業者、鍵山秀三郎の言葉である。毎日毎日、掃除をやり続け、成功を手に入れた。

 鍵山は著書『凡事徹底』(致知出版社)で、成果をあげるには<気づく人になること>が重要だとしている。その方法として<微差、あるいは僅差の二つをいつも追求し続ける>、そして<一歩踏み込んで人を喜ばせる>ことだと説いている。

 なるほど、今季の阪神が掲げるテーマにぴったりではないか。

 昨年、1勝差で優勝を逃し、今年のスローガンを「イチにカケル!」とした。発表時の監督・矢野燿大のコメントを思い返したい。「一球、一打、一瞬にこだわっていこうという思いと、ワンチーム、もう1勝、そして一番上へという意味を込めています」。微差・僅差を追い求め、成功につなげる姿勢である。

 <人を喜ばせる>は矢野が監督就任時から言い続けてきた姿勢で、チーム内に浸透している。

 その点で言えば、この日の広島戦(甲子園)は少々残念な内容だった。結果は2―2の引き分け。2点は適時打ではなく、ミスで失った。つまらない失点だった。

 1回表は無死二塁で一塁線寄りの送りバントを秋山拓巳が打者走者にぶつける悪送球で失った。守備のうまい秋山には珍しいミスだった。8回表は馬場皐輔が四球で許した走者を暴投(捕手の後逸でもある)とボークで還してしまった。

 昨年まで4年連続リーグ最多失策の阪神はミス撲滅が課題だ。昨季86失策のうち投手の失策も10個あった。暴投37はリーグで2番目に多かった。投手も守備陣の1人という意識を強く持ちたい。

 ただ、試合後の矢野の談話で少し思い直した。秋山は4回表1死二塁、右飛で三塁後方へのバックアップを懸命に走っていた。「当たり前のことを当たり前にやってくれる。やっぱりすごいなと思う。野球に対する姿勢が出る。そういうのを積み重ねられているんで、心配は何もないかなと――」。凡事徹底は見えていた。この姿勢を広め、強めることが開幕まで2週間のテーマとなる。

 思えば、3月9日だった。レミオロメンが『3月9日』で<3月の風に想(おも)いをのせて 桜のつぼみは春へと続きます>と歌っている。開花への希望膨らむ一日だったと記しておく。 =敬称略=
 (編集委員)

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2022年3月10日のニュース