今の捕手は甘い!もっと内角攻めを…伊東勤氏&中村武志氏のレジェンドコンビが辛口キャッチャー論披露

[ 2022年1月14日 05:30 ]

対談を終えて握手をかわす中村武志氏(左)と伊東勤氏 (撮影・白鳥 佳樹)
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 新たにスポニチ評論家に就任した前中日ヘッドコーチの伊東勤氏(59)、前中日バッテリーコーチの中村武志氏(54)が、豊富な経験に基づいた「キャッチャー論」を語った。最優秀バッテリー賞を最多タイの6度獲得した伊東氏は西武、同2度の中村氏は中日などで正捕手として長く活躍。現役当時と現在の野球の違い、さらにお互いをどう見ていたかなど、話題は多岐にわたった。 (構成・鈴木 勝巳)

 ――名捕手2人。現役時代、捕手として大切にしていたことは?
 伊東「ひと言で言ったら信頼関係。投手、そしてチームからも信頼してもらえる存在でないといけない」
 中村「コミュニケーションです。あとは投手をずっと見ておくこと。人間観察じゃないけど、球場に来たらできる限りみんなを見る」

 ――サインに首を振ってくる投手もいる。
 伊東「若い時は“何でだろう”と。僕は試合後に年上の人に聞きにいった。答えてくれない人もいる。この若造がっていう時代で。でも自分から素直に聞いて、そういう行動をすれば次からなかなか首を振れなくなる」
 中村「結果より、なぜ首を振ったのかというのが大事。理由は必ずあると思うけど、理由に対して駄目だと言うんじゃなく、捕手の目線で教えていく」

 ――ちなみに星野監督に怒られたのは?
 中村「ボール球にするサインの時に打たれると、とてつもなく怒られました。勝負をしたことに対しては、打たれることも抑えることもある。勝負をしていないと」

 ――現役時代にお互いをどう見ていた?
 伊東「武志はホームの練習が終わっても、ベンチ前でずっとノックを受けていて。正直、どんくさかったと思う。練習に練習を積み重ねてレギュラーの座を獲った。本当に苦労した、オーソドックスな昭和の捕手像という感じ。ザ・キャッチャーという」
 中村「僕はもう雲の上の人で…。日本シリーズ(88年)で一回戦ったけど、その時に星野さんに“キャッチャーで負けた!”って…。星野さんのひと言と、伊東さんの存在が物凄く自分の目標になった」

 ――昔と今の野球。リード面など違いは?
 伊東「我々の時代はグラウンドに行ったら違うユニホームの相手は敵と思えと言われた。今は距離が近づきすぎて仲良くなりすぎている。一番の違いは死球が少ない。死球での乱闘も減ったし、コリジョンルールでホームでの激突もなくなった。野球は格闘技だと教え込まれた時代なので少し物足りなさは感じる。配球的にも内角に一発見せて、外角というのも少しなくなってきている」
 中村「打者に恐怖感を与えないと抑えられない。今の時代も絶対に必要。嫌なイメージを持たせて優勝争いの時のために餌をまくというか、こいつは優しいから外角しか来ないよ、では大事な試合は必ず打たれる」

 ――12球団で注目している捕手は?
 伊東「(中日の)木下は成長した。最初はか弱さがあったが、去年あたりはレギュラーとして任せられるようになった。考え方がスマート。総合力から見たら凄くいい捕手だと思う」
 中村「配球面で彼は少し優しいところがある。そこを割り切ってちゃんとできれば物凄い捕手になる。もう少し経験すれば12球団でNo・1の捕手になる素質はある」

 ――他球団では?
 伊東「ヤクルトの中村。オーソドックスな攻めしかやらなかったのが、去年あたりは勝負どころで内角を使ったり、意外と3球勝負でいったり。思い切りの良さというか、自分に対しての責任感が配球にも表れてきたのかな、と思った」
 ――巨人は正捕手不在が続いている。
 伊東「捕手像をどこに求めるか。大城を一昨年あたりは使って、そこそこ結果を残した。ただ、去年はあまり出ていない。捕手に何を求めているかが明確に分からなかった。打てる捕手というなら、そのままずっと使うべき。(炭谷)銀仁朗をトレードで出したのも分からなかった。これでまた苦労するだろうな、と。中途半端な感じがした」

 ――最後に評論家としての意気込みを。
 伊東「面白おかしくやりたいが、性格的に真面目になる。おそらく厳しい評論になると思う」
 中村「初めて評論家という立場になった。自分たちの時代と今の時代の野球の違いをしっかり評論して、でも昔の野球もまだ必要なんだよと、皆さんにお伝えしたい」

 ≪伊東氏、岡本には初球カーブ…中村氏、村上とはチェンジアップで勝負≫伊東氏と中村氏は、捕手としてセ・リーグの強打者をどう打ち取るのか。投手を中日のエース・柳、場面を1点リードの8回1死一、二塁と設定。伊東氏は巨人・岡本和、中村氏はヤクルト・村上を封じるリードを披露してもらった。

 伊東氏は初球にカーブを選んだ。「1球目がポイント。打者の反応を見たい。たぶん見逃すと思う」。ここでストライクが取れるかで配球は変わるという。2球目は「相手打者が頭に入れている」という柳のカットボール。岡本和が狙ってくるであろう球種を外角へボール気味に。続いて縦の変化のチェンジアップ。2球続けて見逃されたと想定し、カウント2―1から「真っすぐは怖い」と外角カットボール。ファウルになることも想定した。最後は「ここまで使っておらず、打者もマークしていない」と一転して内角直球。ゴロで併殺を狙うとした。

 中村氏も期せずして伊東氏と同じ、初球にカーブを選択した。内角で「必ずストライクを取る」。1ストライクとなったことで2球目は内角にボール球の直球を見せる。カウント1―1。ここで「柳が一番自信を持っている」というカットボールを再び内角へ。これがボールになった場合、対角線の外角低めの直球で2ストライクとする。球場は狭い神宮。一発は避けたい場面で決め球に選んだのは低めへの得意のチェンジアップ。「うまくいけば空振り。村上はチェンジアップを打つのがうまいから、低めでも手を出して凡打になる確率も高い」と理由を説明した。

 ◆伊東 勤(いとう・つとむ)1962年(昭37)8月29日生まれ、熊本県出身の59歳。熊本工―所沢高を経て81年ドラフト1位で西武に入団。正捕手として14度のリーグ優勝、8度の日本一に貢献。03年限りで現役を引退し、04年に西武監督に就任。09年に第2回WBCで総合コーチを務め、ロッテ監督、中日ヘッドコーチなどを歴任。通算成績は2379試合で打率.247、156本塁打、811打点。17年野球殿堂入り。

 ◆中村 武志(なかむら・たけし)1967年(昭42)3月17日生まれ、京都府出身の54歳。花園高から84年ドラフト1位で中日に入団。02年から横浜(現DeNA)、05年に楽天でプレーし同年限りで現役を引退。通算成績は1955試合で打率.242、137本塁打、604打点。引退後は横浜、中日、ロッテなどでバッテリーコーチを務めた。

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