近田監督が京大を変える 同大学初のプロ出身指導者に考え、信念を聞いた「本気で優勝を目指す」

[ 2022年1月13日 20:50 ]

プロで培った経験を伝える京大・近田監督(撮影・坂田 高浩)

 関西学生野球連盟に所属する京大の元ソフトバンク・近田怜王新監督(31)が指導者としての信念、そしてチームの目標を語った。2017年1月に臨時コーチに就任し、助監督を経て、昨年11月に監督就任。同大学としては初めてのプロ野球を経験した監督が、秀才集団と一丸となって、リーグに新たな風を吹かせる。

 スポニチでは監督就任を受け、YouTubeチャンネル「スポニチドラフトチャンネル」で京大硬式野球部の1日に密着。“近田色”を徹底取材した。

 所信表明はシンプルかつ明瞭だった。監督就任後、初めての全体ミーティング。近田監督は揺るぎない「信念」を選手に伝えた。

 「京都大学のユニホームを着て野球部に所属するということは一人、一人がチームの顔。しっかり外部の方にもあいさつし、明るい組織をつくろう。あと当たり前だが、遅刻や無断欠席をしない。道具を大事にする。それができない選手は一切、起用しません」

 徹底したのは野球をすること以前の「基本」とも言える部分。この基本こそが京大野球部のさらなる躍進に不可欠なパーツと考えたからだった。

 「最後の最後で勝ち切れない。それは私生活であったり、練習での守備での一歩であったり。技術はすぐには伸びないので、当たり前の事を当たり前にする。そこにフォーカスして伝えた」

 昨秋リーグ戦、京大は2勝7敗1分けの5ポイントで、最下位に沈んだ。7敗のうち、1点差での敗戦が3試合。全てを勝ち切れていれば…の思いは残るだけに、必然的にチームの強化ポイントは守備面になる。

 「攻撃に関しては、ノビノビ思い切って攻めて行きたい。基本は投手中心に守り切る野球。しっかり守れる選手は起用します」

 今春キャンプなどでは個人のスキルの向上はもちろん、内外野の連携強化などを主眼に置いて守備練習を進めていく。

 チーム方針の「軸」をぶらすことはない。ただ軸以外の部分は、大半を個人の裁量に任せる。平日の全体練習は午後2時から始め、2時間弱で終了。グラウンドは最大で午後8時まで使用できるため、残りの4時間は個人練習に充てる。選手個々が課題や強化ポイントを洗い出して練習に取り組む様子を、監督は見守るだけにとどめている。

 「押しつける指導をせず“こうなりたい”という練習を尊重します。方向性がズレてきたら、違う話を入れながら導いていく感じですね。京大生は考える能力が高いので」

 考える力と吸収力の高さが京大野球部の長所と分析する。練習をの意図をくみ取り、理論と根拠を示し、実演を交えて指導する。そのうえで、選手に「超一流の考え方」を伝達して、最大限の効果を引き出す。

 「僕の投げていたフォークと、日本で一番いいフォークを投げる千賀では感覚が全然違う。捕手のスローイングも僕では分からないこともある。彼らの感覚的な部分や、練習法を教えると、選手は嬉しそうに参考にしようとしてくれます」

 08年ドラフト3位でソフトバンクに入団した近田監督にとって、今や球界を代表するバッテリーとなった千賀、甲斐は2年後輩にあたる。ともに練習し、間近で見て、聞いてきた「成功の秘訣」は選手達の最高の教材となっている。

 来春リーグ戦に向けては「本気で優勝を目指す」と言い切る。そのための数値目標も明確だ。「数字としては、去年も踏まえてチーム打率・250以上。守備の面では防御率は大事ですが、失策を5個以内に減らしていこうと話をしている」

 大学史上初の4位に躍進した2019年秋のリーグ戦ではチーム打率・214、8失策。高いハードルに敢えて挑んでいく。

 強豪私大のように恵まれた練習環境ではない。室内練習場がないため雨が降れば、全体練習は中止となり、個人練習に切り替わる。実験などで全員がそろわない日も多い。それでもやり方次第では勝てる。それを実証するために監督は粉骨砕身する。

 「常にAクラスにいる組織をつくっていきたい。どんどん新しい情報、やり方を取り入れていくチームにしたい。僕のやり方だけにこだわるのでなく、新しいものを選手と学びながら。守るところは守り、新しいモノはどんどん取り入れる。そういった材料を提供できる監督でありたいし、目指しています」

 青年監督と秀才軍団の頂点を目指す挑戦が始まった。

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