中畑清氏 東京五輪開会式聖火リレーに感動 04年アテネで感じた長嶋さんの思い「これがプレッシャー…」

[ 2021年7月27日 05:30 ]

東京五輪開会式 聖火のトーチキスを行う(左端から)王貞治さん、長嶋茂雄さん、松井秀喜さん
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 【キヨシスタイル】いきなりの金メダル&感動ラッシュ。一日中五輪づけになってる。開会式から号泣だもんね。聖火リレーに長嶋茂雄さんが登場。王貞治さんと松井秀喜に支えられながら自分の足で立ち、歩いて聖火をつないだ。感極まったよ。

 東京五輪の開催が決まった瞬間からずっと「聖火台に点火するのは長嶋さんしかいない」と思ってた。野球界のみならず日本のスポーツ界を引っ張ってきた戦後最大のヒーロー。アスリートとして最後の大仕事をしてもらいたかったんだ。

 本当は1996年のアトランタ五輪、パーキンソン病と闘いながら震える手で聖火台に点火したムハマド・アリをイメージしてた。少し違ったけど、新国立競技場に元気な姿を見せてくれただけで最高にうれしかった。

 2004年のアテネ五輪。監督を引き受けた長嶋さんからヘッド兼打撃コーチを仰せつかった。ご一緒させてもらった1年半。長嶋さんの日の丸に対する思いの深さを知った。03年11月、札幌で行われた最終予選。3連勝で終えて宿舎の部屋を訪ねたら、ユニホームを脱ぎながら「ハァー」とため息をつき、言葉を絞り出した。

 「キヨシ…、これがプレッシャーなんだなあ」

 いつも「プレッシャー?幸せですよ。エンジョイしなさい」と言っていた人が勝って当たり前の予選に命懸けで臨んでいたのだ。4カ月後に脳梗塞で倒れ、アテネでは私が指揮を執ることになった。準決勝でオーストラリアに0―1の敗戦。銅メダルに終わった。長嶋さんだったら金メダルを獲っていたはず。

 無念さが残った五輪。東京開催が決まって、私の思いを伝えたらミスターも「聖火リレー、やりたいねえ」。その一念でリハビリ、いやトレーニングに励んできた。

 85歳で迎えた本番。車いすに乗ることなく、左手で聖火をつないだ。いかにもミスターらしい立ち居振る舞い。アスリートに対する激励だけじゃなく、国民に対するメッセージが込められていたような気がする。

 賛否両論ある中で開催されるコロナ下の五輪。みんなが心を一つにして目の前の困難に立ち向かい、アスリートが存分に力を発揮できる大会にしようよ。長嶋さんはそう訴えたかったんじゃないかな。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

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