パドレス・ダルビッシュ 28日初陣の侍ジャパンにエール「成功は目の前にある」

[ 2021年7月27日 07:30 ]

リラックスした表情でインタビューに応じるパドレスのダルビッシュ

 パドレスのダルビッシュ有投手(34)がオンラインでスポニチ本紙の単独インタビューに応じた。前回野球競技が行われた08年北京五輪に稲葉監督、田中将らとともに出場。当時を振り返るとともに、28日にドミニカ共和国との初戦に臨む侍ジャパンにエールを送った。(取材・構成 奥田秀樹通信員)

 ――08年の北京五輪で思い出すことは。
 「最初のキューバ戦で先発したんですけど、自分が結構自信を持った、気持ちが入った球を長打にされた。グリエル、ベルに長打を打たれたりとか、びっくりしたのはありました」

 ――当時アマ世界一と言われたチームの強さに驚かされたと。
 「速い球をインコースでも打つ。打者の特徴もあったんでしょうけど、当時はスカウティングリポート(データ)が今ほど発達してなかったこともあって、力だけではどうしようもないなというのは分かりましたね」

 ――調整方法も普段と違っていたのでは。
 「僕が覚えているのはジャイアンツ球場で練習している時、外野を走っていたんですけど、星野さんがボールを投げてきて、パッと見たら“何月何日 キューバ”って書いてあった。それをまず覚えているのと、キューバ戦のグリエルとベルのヒットと、丸刈りにしたのくらいしか覚えていない。五輪用にどう調整したかとかは、全く覚えていないですね」

 ――口頭ではなく、ボールで伝えられた。
 「受け取った時、僕も性格が変わっているので“ああ、もしこれで優勝したら一つの美談というか、格好良い感じにするんやろな”と思いながら、受け取ったのを覚えているんですけど。勝てなかったので。そういうこともありました」

 ――試合の後、長髪をバッサリ切ってしまったことが話題になった。田中将と一緒に。
 「ちゃんと覚えてないんですけど、自分の中でふがいなさがあって、自分に罰じゃないけど、宗(川崎宗則)さんとかと一緒にやって。僕が最初にやったのかな。当時髪が凄く長くて茶髪で、なんかちゃらちゃらした感じだったけど、丸刈りにしたのが(反応が)良かったみたいで。川崎さんとか、他にもやった人がいて、まあ、マー君は無理やり」

 ――仲の良い田中将が8年ぶりの代表復帰。32歳でチームリーダーと言われている。大変な重圧だと思うが。
 「凄いなと思いますね。凄い期待もあるし、やって当たり前と見られるし。みんな弱さを持っている。自分も弱いところをいっぱい持っている。それをマー君の場合は元々、精神的な強さを持っている。だから、“こういうところで負けない”とか、“ここで俺は結果を出しにいく”とか(思える)。もし仮に駄目でも、それがより成長につなげられると思える人だから。だからチームリーダーとして、実績もそうですし、いろんな部分で凄いなと思いますね」

 ――自主トレをともにするなど親交のある千賀も出場する。
 「ケガから復帰したばかり。復帰登板も点を取られたりしていた。不安も絶対にある。クリアできていない課題がある。そんな中で結果を出して当たり前、一発勝負のオリンピックに出るというのは、凄く不安があると思うんですけど、修羅場をくぐってきた選手でもあるので。今は苦しいかもしれないけど、終わった時には何とかしていると思うので、そこを見たいですね」

 ――日本ハム時代のチームメートで、北京や09年のWBCを一緒に戦った稲葉監督への思いは。
 「もちろん頑張ってほしいし、優勝もしてほしいですけど、稲葉さんってそんなに野球が好きだったんだなって、今になって気づきましたね。あれだけ実績あって、2000安打も打っていて、北海道でも人気者だし、それでよくWBCや五輪の監督になろうと思えるなと。好きじゃないとできない。お金とかでは絶対にないと思う。夢があるから多分やっていると思うので、夢をぜひ実現してほしいと思う」

 ――自身はコロナ下の昨季、カブスをプレーオフに導き最多勝にも輝いた。金メダルに向け、新型コロナとも闘う侍ジャパンにアドバイスがあれば。
 「ベストの感染対策はしないといけない。特にチームスポーツの野球はそう。自分が夜ちょっと飲みに行きたいとか、女の子と遊びたいとか、そういうのは許されない。僕が侍ジャパンの人たちに言いたいのは、自分だけのオリンピックじゃないし、自分だけの試合ではない。周りの人のためにも、この期間くらいは自分を律して、なるべく感染しないようにすれば、実力はあるので、成功は目の前にあるんじゃないかと思う」

 ――ホームの日本でプレーできるのはアドバンテージか。
 「相当ですよ。食べるのは日本食で好きなものを食べられるし、環境も気候も慣れている。当時の北京は空気が凄く悪くて、汗もベタつき方が普通じゃなかった。食べ物については、台湾に予選で行った時はひどくて、みんな食べられるものがなかった。北京は割とマシだったけど、日本のようにはいかない。ホテルの部屋も汚いところがあったり。ホームで戦えるのはアドバンテージですね」

 ――最後に一言、エールを。
 「監督、コーチとしっかり話をしてコミュニケーションを取って、みんなで仲良くやってほしいです」

 ◇ダルビッシュ 有(だるびっしゅ・ゆう)1986年(昭61)8月16日生まれ、大阪府羽曳野市出身の34歳。東北高から04年ドラフト1巡目で日本ハム入団。沢村賞を1度、MVPを2度獲得し、3度のリーグ優勝に貢献した。09年WBCでは胴上げ投手。11年オフにレンジャーズと契約し、17年7月にドジャース、18年2月にカブス、昨年12月にパドレスへ移籍した。日米通算171勝で、米78勝は田中将に並んで日本選手3位。1メートル96、99キロ。右投げ右打ち。

 ≪元MLB選手に注目≫ダルビッシュは他チームについても言及。かつてメジャーで活躍した選手に注目している。「カブレラ(ドミニカ共和国)、バティスタ(同)、キンズラー(イスラエル)…。日本の投手相手にどんなバッティングをするかは興味があります」と話した。また、北京五輪で優勝した韓国については「この十何年、投手に関しては伸びていない。投手のレベルが上がらないと、打者のレベルが変わらない。今の日本だったらいけるんじゃないかなと思います。韓国と日本の戦力という点で、07年とか08年のような感じではない」と分析した。

 ≪41歳で侍 否定せず?≫大リーグが選手を派遣しない方針のため、ダルビッシュは今回の出場はかなわず。次回の24年パリ五輪では野球競技が除外され、早くても復活は28年のロサンゼルス五輪。8月16日が誕生日のため、今回の日程なら41歳11カ月で開幕を迎える。出場について問われると、苦笑いを交えながら「可能性は…」と否定せず。円熟期を迎えている自身を冷静に分析し「弱さもよく分かっている。次のステップに僕が行けたら五輪に出たいとなるかもしれないですけど。まだそのレベルにない」と、さらなる向上に目を向けた。

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