【スポニチ潜入(14)】瀬田工・小辻 湖国の公立から球界最高峰へ 最速146キロスリークオーター右腕

[ 2020年6月15日 10:00 ]

プロも注目する最速146キロ右腕、瀬田工・小辻
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 スポーツニッポン新聞社がお届けする記事と動画を連動した企画「スポニチ潜入」。主に関西圏のアマチュア野球選手を紹介する本日公開の第14回は、湖国・滋賀が生んだプロ注目の最速146キロ右腕、瀬田工・小辻鷹仁投手です。

 日本一大きな琵琶湖のほとりに、大きな可能性を秘めた近畿屈指の実力派右腕が雌伏している。瀬田工・小辻だ。長い手足を目いっぱい使い、腕をしならせて投じるボールは威力十分。部活動再開から、まだわずかな期間しか経過していなかった6月上旬の取材日にも、試運転段階のブルペン投球で最速143キロを叩き出した。全国的には無名ながら、プロも注目する逸材だ。

 1メートル81、82キロ。その恵まれた体格は公立校のチーム内にあって、ひときわ目を引く。高校入学時は1メートル73、65キロと今より一回り小さく、直球の最速も122キロどまりだった。当然、その時点ではプロなど夢物語だった。ところが1年の終盤になると、体の成長に比例して球速が130キロ台前半まで急上昇。そして一気に、プロに対する意識も高まった。

 昨年末には、自信もつかんだ。滋賀県選抜に選出されると、まずはオーストラリア遠征前に行われた龍谷大との強化試合2試合に登板し、計3回無失点と格上の大学生を圧倒。そして、オーストラリア遠征でも先発、抑えとして2試合に登板し、計7回無失点の快投を演じた。「スイングスピードの速い外国人の打者相手に自分の球が通用したのは、自信になりました」。その結果、滋賀県のみならず、近畿を代表する右腕へと評価を上げた。

 「やっぱりストレートが自信があります」

 最大の持ち味である直球の最速は、オーストラリア遠征で叩き出した146キロ。中学1年時に本格的に投手を始めてから一貫してスリークオーターで、柔らかいフォームから繰り出すボールには独特の軌道が備わる。目下の目標は150キロに設定。「150キロを投げるために下半身強化に取り組んできました。短いダッシュで体の切れを出すことも心がけています」と言葉に力を込める。

 元来の身体能力が高い。投球だけでなく、スイングスピードもチームトップの最速145キロを誇り、高校通算本塁打も10本以上と投打両面でセンスがあふれる。直球に加え、スライダー、チェンジアップ、カットボール、カーブを操る器用さも持ち合わせ、今は投球の幅を広げるために縦スライダーを習得中。自分で考え、行動できる長所を持ち、小椋和也監督も「しっかり考えて行動できる子なので任せてあります」と全幅の信頼を寄せる。

 複数の大学、社会人チームからも声を掛けられているが、高校卒業後の第一希望進路はプロ。その決意の表れとして、すでに記入済みプロ志望届用紙を小椋監督に預けてあるという。コロナ禍によって春夏の公式戦がすべて中止となり、その実力を発揮する舞台は激減。だが決意は揺るがない。今年に入ってからも阪神、巨人、オリックスなど多くの球団が視察に訪れており、プロの注目度も高い。

 最大の魅力は「将来性」だ。某球団のスカウトも「体のサイズがあり、軸もしっかりしているところが良い。体をスムーズに使うことができている。フォームがしなやかで柔らかいし、あの腕の高さから、あれだけの直球が投げられるのは面白い。まだフォームに手を加えるべき部分もあるけど、上(プロ、社会人、大学)で鍛えれば、もう一つ上のレベルの投手になれる可能性を秘めている。将来的に150キロを投げられる可能性を持っている」と高く評価する。

 高校球児として目標に掲げていた夏の甲子園大会は、無情にも中止となった。それでも小辻には夢がある。野球人として、球界の最高峰を目指す。(大阪報道部・惟任 貴信)

 ◆小辻 鷹仁(こつじ・たかと)2003年(平15)2月10日、滋賀県栗東市出身。葉山小2年から「葉山ウインズ」で野球を始め5年時から「葉山東スピリッツ」。葉山中では「大津北リトルシニア」に所属し3年時にエースとして近畿大会16強。瀬田工では1年夏から背番号20でベンチ入りし、2年春からエース。同冬に滋賀県選抜の一員としてオーストラリア遠征に参加。50メートル走6秒4、遠投110メートル。1メートル81、82キロ。右投げ右打ち。

 ※ 本記事の動画は弊社YouTube公式チャンネル「スポニチチャンネル」(https://www.youtube.com/channel/UCCDmd01WsuFBF8n3yMjHQ1A)において6月15日正午頃、公開予定です。

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