ただただ皆と野球がしたい――健大高崎ナイン、1試合限りの「甲子園」へ

[ 2020年6月15日 09:30 ]

甲子園球場
Photo By スポニチ

 今年のセンバツに出場予定だった32校を甲子園に招待する「2020年甲子園高校野球交流試合(仮称)」の開催が発表された。春、夏の甲子園大会中止は大変残念だが、こうした場が用意されたことは喜ばしい。高崎健康福祉大高崎(群馬)の戸丸秦吾主将も「甲子園でプレーできるのはとてもうれしい」と笑顔だった。

 ここ数カ月間の球児たちの揺れる思いは、想像して分かるものではない。戸丸は「感情の浮き沈みが激しくて大変でした。中止が決まった時は目の前が真っ暗だった」と振り返る。同校は昨秋の関東大会で優勝。だが3月11日、出場予定のセンバツ中止が決まり「甲子園という舞台がさらに遠く感じた。心と体が別々になって気持ちが追いつかない。体だけ甲子園へ飛んでいるのに、心は“それは無理”と受け止めている」と心境を吐露した。

 その後、チームは自主練習となった。絶対に夏は甲子園に出る。その一心で、集まれなくともチームは一丸となった。定期的に電話で連絡を取り合い、いつも「夏の大会に向けて頑張ろう」の言葉で締めた。だが5月20日、夏の甲子園も中止が決定。「甲子園で野球をするということだけが3年生にとってはモチベーションだった。練習試合でも何でもいいので、ただただ皆と野球がしたい」と悲痛な思いを口にした。

 ショックを受けているチームメートにも声をかけられず、気持ちの整理はできていなかった。それでも「神様は自分たちに乗り越えられる試練しか与えない。自分たちの成長のためにはこの期間はいい期間だった」と懸命に前を向く姿が印象的だった。

 6月10日、交流試合の開催が決まった。各校1試合限りの「甲子園」。「自分たちの高校生活をまっとうしたい。群馬県代表、関東代表としてのプライドを持って戦っていきたい。勝って終わりたい」と1試合にかける意気込みを語った。戸丸は甲子園を「日本で一番、野球が楽しめる舞台」と表現した。最高の夏にしてほしい。(記者コラム・岡村 幸治)

続きを表示

2020年6月15日のニュース