一二三 はい上がった夏…遠かったあと一歩

[ 2010年8月22日 06:00 ]

<興南・東海大相模>決勝で敗れ涙を流す東海大相模・一二三

 【東海大相模1―13興南】限界は超えていた。マウンド上で、東海大相模・一二三の表情がこわばっていた。悪夢のような時間が過ぎた後、スコアボードには13点を失ったことが記されていた。

 「腕が振れなかった。5回には腕の位置も下がりました。今までで一番迫力のある打線。頭が真っ白になった」。19日の準々決勝・九州学院戦で153球、20日の準決勝、成田戦で157球。立ち上がりから飛ばしたが、酷暑の中での3連投は、チームを勝たせる投球を追い求めた右腕から体力も気力も奪った。直球は走らず、頼みのスライダーも制球できない。6回で16安打を浴びて7回からマウンドを譲った。40年ぶりの大旗をつかむことができなかった右腕は「完全に相手の力が上だった」と潔く認めた。
 大阪出身だが、甲子園出場を目指して神奈川の同校に入学した。プロが注目する右腕に成長したが、優勝候補に挙げられた今センバツは初戦敗退。5月に上手からサイドにフォームを転向したのは賭けでもあった。だが、激戦区・神奈川を制して33年ぶりの夏切符をつかむと、巨人・原監督でさえ立てなかった夏の決勝の舞台までたどり着いた。門馬監督も「ウチはあいつでつくってきたチーム。ここまでよくたどり着いてくれた」とどん底からはい上がってきたエースをねぎらった。
 注目右腕には地元横浜、中日、巨人などが熱視線を送る。東海大進学の可能性もあるが本人は「今後のことは、監督とじっくり話します」と進路の明言は避けた。伝統校のエースナンバーを背負って投じた665球。島袋だけじゃない。一二三も間違いなくこの夏の主役だった。

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2010年8月22日のニュース