1年前の敗退糧に「強打の興南」名を刻む

[ 2010年8月22日 06:00 ]

<興南・東海大相模>優勝旗を前にガッツポーズする島袋(左)ら興南ナイン

 【興南13―1東海大相模】興南打線がお得意の集中打で一二三を一気に攻略した。4回だ。先頭の4番・真栄平の四球を足掛かりに、打者11人で5連打を含む7安打のつるべ打ち。あっという間の7点。一塁側を埋めた興南応援席からの指笛は、甲子園全体に響き渡った。

 「最後だから思い切り振っていけ、と監督から言われてました。高めに変化球が来たので踏み込んで打ちました」。打者一巡した2死一塁から7点目を叩きだした真栄平は納得の表情で振り返った。決勝戦での1イニング7得点は、50年の松山東以来60年ぶりの快挙だった。
 3回まで0―0。早いペースの試合展開は、投手戦かと思われたがベンチの我喜屋監督は違った。「初回からどんどん振っていたので1点取ったところでいけると思いました」。3回までの打者12人でファーストストライクを見逃したのは3人だけ。うち我如古、真栄平は2ボールから「待て」のサインによるもの。積極的に打って出るボディーブローのような攻撃で一二三にダメージを与えると4回にラッシュ。一気にKOにつなげた。
 興南打線が最も大切にしているのはつなぐ意識だ。1番の国吉陸は「打って塁に出て、送って、還す。いつもの攻撃ができました」と話す。「的を絞れというけど的が外れたら対応が遅れる」という指揮官の方針のもと、打撃練習では投手が約12メートルの至近距離から直球と変化球を打者に知らせず投げる。体が無意識に反応するまで繰り返し練習することで、自然とポイントは近くなりスイングも速くなった。引きつけて打つぶん空振りも少なく、強い打球になる。チームは6試合で19三振の上、見逃し三振はわずかに1個。こうして強力打線は出来上がった。
 6試合計50得点。昨年は貧打で島袋を援護できずに春夏連続初戦敗退だった。あれから1年。「強打の興南」は強く高校野球ファンの記憶に刻まれた。

 <我如古主将“県民の優勝旗”>6回にダメ押しの3ランを放った興南・我如古(がねこ)主将は、悲願の大旗を手にして「この優勝旗は興南だけじゃなく、県民が勝ち取ったもの」と誇らしげだった。今センバツでは個人大会通算最多安打タイの13安打をマーク。今大会でも25打数12安打8打点と打ちまくった主将は「興南で野球のスコアボードじゃなく、人生のスコアボードにいい記録を残していくことを学んだ」と最高の結果に胸を張った。

 ≪60年ぶり3度目の大会タイ記録≫決勝戦の1イニング7得点は、50年に松山東が鳴門戦の7回に記録して以来、60年ぶり3度目の大会タイ記録。それより以前には20年に関西学院中も慶応普通部相手の5回に7得点をマークしている。

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2010年8月22日のニュース