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スキンシップで元気なサケを再び

[ 2017年10月28日 07:30 ]

サーモンセミナーの参加者たち
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】3・11の震災、原発事故から6年たちました。「木戸川サケ復興応援サーモンセミナー」も今回で3回目です。今年もいろんな方をお誘いし親子、家族、夫婦も含め25人が賛同してくれました。

 釣りをする方なら楢葉町は知らないけど木戸川は知っていると言う方もいることでしょう。事故前は北関東(南東北)屈指のサケ釣りの川でした。

 サケは水産資源保護法という法律で捕獲(釣りを含む)が禁止されていますが、有効利用調査という形で釣りをすることができるようになりました。北海道の忠類川が1995年に国内初でそれを行いました。

 木戸川は“調査”を開始した03年から一気に有名になりました。というのもこの川のサケは川に上がっても非常に攻撃的で、やる気満々、ルアーやフライを追いかけてくるのです。こんなサケは世界的にも珍しいのです。ところが11年の震災後の原発事故から木戸川でのサケ釣りは中止で、今年もできませんでした。

 サーモンセミナーでは木戸川のこれまでと現状、そしてサケの復興を応援するために現地へ赴き、捕獲と採卵受精のお手伝い。あらかじめ特別採捕許可を取得しての捕獲作業です。

 台風接近直前で増水が心配でした。案の定、川に入っての名物合わせ網や地引き網はできませんでした。しかし孵(ふ)化場長の鈴木謙太郎さんをはじめ漁協の方々の提案で、やな場のカゴの中に入ってサケを手づかみさせていただきました。暴れるサケの尻尾をつかんでトラックのイケスに入れるのです。

 一昨年、高校3年生の時に参加した諸井凛君は今、大学2年生。両親、中3の弟も一緒に家族で参加です。彼以外、サケをつかむのは初めてです。他の参加者も、初めて見る生きているサケの姿、そしてそれをつかんで底力を感じる、狩猟本能が目覚める、などなどさまざまな表現で感動を表していました。

 最年少の武藤和ちゃんは初日はサケの顔に恐怖を感じていましたが、2日目は慣れて、暴れるサケをなんとか持ち上げようと努力していました。

 自分たちで捕獲したサケから卵を取ってそれに受精させました。その数およそ20万粒。この卵からかえった稚魚は来年春木戸川に放流され北洋へと旅立ちます。回帰数が増えて十分な採卵親魚の確保ができるようになったらまた釣獲調査が再開できます。

 さてここで宣伝させてください。木戸川のサケに人生を懸けた男、鈴木孵化場長のドラマ、震災から復興への苦悩や愛情を描いた物語が本になりました。「サケが帰ってきた・福島県木戸川漁協震災復興へのみちのり」(小学館)です。

 サケ釣りが再開されれば黙っていても人は集まってくるでしょう。「私が木戸川のアドバイスをしているのだ」というやからも現れることは必至です。そうなってきたら私たちの役割は終わります。今度は純粋にサケ釣りを楽しみたいものです。その日が早くきてほしいです。(東京海洋大学客員教授)

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