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くいしん坊も満足満腹!アコウ鍋で待ってます

[ 2017年3月25日 05:30 ]

節子さんを中心に夫・慶治さん(右)と長男・貴史さん。「働きものの母です」と思いやる
Photo By スポニチ

 【釣り宿おかみ賛】千葉県太海の幸昌丸で、釣り船と民宿を切り盛りする女将の濱崎節子さん(73)。当主で夫の慶治さん(75)と始めた釣り船を半世紀にわたり陰で支えてきた肝っ玉母さんだ。そんな節子さんが作るアコウ鍋は、あの食いしん坊も絶賛する味だ。(入江 千恵子)

 1943年(昭18)10月、千葉県江見町(現鴨川市)で漁師の家に節子さんは生まれた。

 戦争にも行った父は口数が少なく厳しかったが、母はとても優しかった。4人きょうだいの一番上で、図書館で伝記を読むのが好きな物静かな少女だった。

 高校卒業後は、渋谷・道玄坂にある薬局に就職。手打ちのレジや多くの商品を覚えるのが大変だったが、一緒に上京した友達と都会生活を満喫した。

 21歳で帰郷し、母が切り盛りしていた食堂で配膳や調理を手伝っていた。そこで運命の出会いが訪れる。漁師で常連客だった慶治さんから「一緒にご飯食べに行きましょう」と声を掛けられ、2人の仲は急接近。デートは、ハイヤーで市内の清澄山やお寺などを1日かけて回った。「あの頃はきっと、お金を持ってたのね」とちゃめっ気たっぷりにほほ笑む。

 慶治さんの優しさにひかれ、24歳の時に結婚。1年が過ぎたころ、慶治さんが漁と並行して釣り船を始めることを決意。初めて聞いた時、「特に驚くこともなく、“はい”って感じでしたね」。

昔からの漁師町で周囲に遊漁船をしている人はなく、好奇の目で見られることもあったが節子さんは意に介さなかった。人生の荒波も、ナギに変えてしまうようなおおらかな性格なのだろう。インタビューの間、一度も「苦労した」という話を聞くことはなかった。

 やがて釣りブームが訪れ、木造船で始めた釣り船は、プラスチック船へと大きくしていった。船を購入するのに数千万円の大きなお金が動く時も「止めたことはなかったですね」と振り返る。

 49歳の時、番組の取材で俳優・村野武範さん(71)が訪れた。節子さんが作ったアコウ鍋を食べ、「おいしいね」とおかわりもした。たっぷりの野菜とアコウのだしがバランスよく調和した味噌味の鍋。「食いしん坊!万才」のリポーターとして全国の味を知る村野さんも認めるおいしさだった。

 自慢の鍋は、現在も民宿で出すことがある。アコウの漁期は10〜6月。今季もまだチャンスがある。

 ほかにも慶治さんや長男で船長の貴史さん(47)が素潜り漁で捕ったアワビやサザエが並ぶ時も。メニューは釣果次第だが、1泊2食6500円で新鮮な海の幸が味わえるのは魅力的だ。

 節子さんの楽しみは、大好きな演歌を慶治さんとカラオケで歌ったり、聴いたりすること。「きのうは福田こうへいを見にいったの」とうれしそうに語る。

 今年で結婚50年。これまで「平々凡々と来たから」と振り返る節子さんの指には慶治さんから結婚20年のときにもらったダイヤモンドの指輪が光る。

 夫婦船の航海はこれからも続く。

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