【内田雅也の追球】交錯した明暗二つの思い

[ 2024年3月7日 08:00 ]

オープン戦   阪神2―5楽天 ( 2024年3月6日    甲子園 )

<神・楽>2回、三塁手の阪神・佐藤輝が楽天・阿部のフライを落球(撮影・後藤 大輝)
Photo By スポニチ

 オープン戦6戦全敗である。8月1日に開場100周年を迎える甲子園球場での初戦は攻守に精彩を欠いていた。

 頭の中で明暗双方の思いが交錯する。

 一つは、まだオープン戦ではないか、という楽観である。ガタガタするんじゃない、どっしりと構えておけばいい。何も勝ちにいっているわけではない。今は選手の力量見極めと主力調整の場ではないか。選手たちは自分の役割を把握している。3月29日にしっかりと合わせてくる。

 一方、本当に大丈夫かという不安がある。シーズンが開幕しても同じように打てない、守れない試合が続くのではないか。プロ野球は一寸先が闇の世界。昨年日本一となったからと言って、安心はできない。油断や慢心はないか。人の心は目に見えない。だから……。

 ――といった話を試合後、阪神ヘッドコーチ・平田勝男にすると「そうだな」とうなずき、「怖いな……」と漏らした。「怖い」のだ。開幕に向けての不安はどんな年もつきまとう。それが3月という季節である。

 ともあれ、この日の試合で言えば、つまらない守備のミスが気になる。

 2回表は先頭打者の三飛を佐藤輝明が落球して(失策)無死二塁。1死後、適時打を浴びた。5回表は1死二塁から三遊間をゴロで抜ける左前打を浴び、チャージした左翼手・前川右京のグラブからボールがこぼれ落ちて(失策)、走者の生還を許した。9回表は2死二塁からの右前打で右翼から中継した一塁手・小野寺暖の本塁送球が低投となった。本塁に失策はつかなかったが、好球ならば刺せていた。

 いずれも論評するに値しないミスである。佐藤輝の落球はしっかり捕れとしか言えないし、前川の捕球はあわてなくても走者は本塁突入していなかったし、小野寺の悪送球もあわてすぎである。

 打線も若い前川の1本と井上広大の短長打2本の計3安打と、気候の通り、寒い限りだった。

 こんな時、監督・岡田彰布は頼もしい。勝敗を問うと「そんなん全然関係ないよ」と笑った。記者席で震えていた番記者に「あ~寒い寒い。寒いなあ。ベンチはもっと寒いぞ」とまた、笑った。

 松任谷由実が『まぶしい草野球』で「まだ季節浅く 逆戻りの天気もあるわ」と歌っている。そう、春もまだ浅い。 =敬称略= (編集委員)

続きを表示

「始球式」特集記事

「落合博満」特集記事

2024年3月7日のニュース