ロッテ・井上の持ち味は豪放さだけじゃない 「バッティングは技術」 右中間弾に見えた職人気質

[ 2023年5月7日 08:00 ]

ロッテ・井上晴哉
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 昭和の香りと言ったら、平成元年生まれの33歳には失礼かもしれないが、「アジャ」の愛称で親しまれているロッテ・井上晴哉は一時代前のプロ野球選手の雰囲気を漂わせている。

 身長1メートル80、体重115キロの巨体を誇るパワーヒッターで、18、19年には2年連続で24本塁打を放った。ここ2年は故障もあり、思うような成績は残せなかったが、今季は若い選手が台頭するチームにあって、ベテランらしい存在感を示している。

 ここまで20試合に出場して57打数14安打7打点、1本塁打で打率・246。数字的には本人も満足はしていないだろうが、インパクトに残る一打は多い。

 4月19日の日本ハム戦では侍ジャパンの伊藤から右中間へ1号2ランを放ち、6年目の森のプロ初勝利を援護。同29日のオリックス戦では初回1死一塁から、同じく侍ジャパンの山本の149キロの直球を叩いて左中間へ先制の適時二塁打を放った。

 見た目通りの豪放さで、ヤマを張ってフルスイングすることもあるが、実は「バッティングは技術」と言い切る職人肌の選手。派手な活躍だけでなく、求められる時に犠飛や進塁打という仕事をしっかりこなしている印象も強い。

 今季から日本ハムの本拠地となったエスコンフィールドでの一発は驚きしかなかった。日本初の左右非対称の球場で、左翼までの距離が右翼までよりも短く、一般的には右打者有利とされる。そのことを井上に振ると、こちらの予想とは違う答えが返ってきた。

 「狙うなら右中間かな。“打感”がいいし、俺の打球は向こうが伸びるから」。井上が“打感”と表現した感覚的な部分は理解できなかったが、試合で予告通りの右中間弾を放った瞬間は思わず、うなった。

 3日の楽天戦では0―0の延長10回の先頭打者。一発を狙ってもいい場面だったが、「相手が長打警戒なのは分かっていたから」とコンパクトな振りに切り替えて中前打。続くポランコの決勝2ランを呼び込んだ。6日のソフトバンク戦で初回の中前適時打で、44イニングも適時打がなかったチームに先制点をもたらした。シングルヒットなら簡単に打てる訳ではないだろうが、簡単に打っているように見えることが凄い。

 若手の躍進で4月を首位で終えたチームは、5月に入りやや減速気味。やはり長いシーズンを戦っていくにはベテランの力も不可欠だ。これからもアジャのバットに注目していきたい。(ロッテ担当・大内 辰祐)

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