【広島・秋山インタビュー(下)】不本意だった昨季は「修正に割けるだけの体力がなかった」

[ 2023年2月7日 07:03 ]

特製Tシャツを着てポーズを決める秋山
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 ※インタビュー(上)から続く。

 ――西武時代の15~19年まで5年連続フルイニング出場を続けた。
 「そこまで頑張れたことが、引退後や誰かに伝えるときに、重みとして伝わるんじゃないかな…と。人に言うためにやっているわけじゃないけど、何かを伝えるとき、例えば自分の子供でもいいです。これをやったことが自分には大事だった。苦しくても、試合に出るためのコンディションを整え切った…とか」

 ――分かります。
 「いま語ることじゃないんです。ただ、この年齢でフル出場フルイニングを達成できたら、また一つ大きな自信というか、オフからやってきたことが良かった…とか、伝えられる幅が広がるんじゃないかなと思うので」

 ――ファンには、西武時代の印象が強くインプットされています。
 「そうでしょうね」

 ――昨季途中にカープへ移籍し、日本の野球にアジャストしようと思うのか、それとも新しい秋山翔吾をつくろうと思っているのか。どちらでしょう。
 「難しいですね。プロ入り後の4年間(11~14年)は、野球人としての自我がない状態でやっていた感覚なんですよ。最初はとにかくガムシャラに強く振ることを心がけた。それが5年目(15年)からメジャーへ行くまでの期間は、もっと細分化して考えるようになった感じなんです」

 ――打撃を細分化。
 「そう。打率を上げたい、安打数を稼ぎたい。では、どういうふうにバットを入れたらいいか。トップの位置が高すぎないか。ボールの内側に入れて左前に何本打てるか…とか」

 ――4~5年目に何があったんでしょう。
 「4年目(14年)が終わり、このままの数字だったら、試合に出られなくなってクビになると感じたんです。14年は若手が台頭しそうなシーズンで、僕の中では危機感があった。今までやっていないことに取り組み、それがたまたまいい方向に行った。シーズンでの成功体験があって、基本ベースを変えずにやったのが19年まで。マイナーチェンジはあるんですが、14年までと15年以降では基本ベースが全く違います」

 ――なるほど。
 「で、メジャーへ行って、1~2年目はケガもあって思うようにいかず、一昨年のオフはまた今までやっていないことをやった。レッズのラインアップを見ると、1人で1点取るような打撃スタイルの選手でないと試合に出られない。押し込まれるのではなく、はじき返してホームランを打てるような体や体重を求め、昨季の準備をしました」

 ――かなり大きなスタイルチェンジですね。
 「そう。メジャーで自分のスタイルを貫いても頭打ち。新しい自分を探さないと道はない。一昨年のオフは、そんな状況でした。でも、結局終わってしまった。メジャーでプレーしないのなら、それを続ける意味がないというか、必要がない。それで日本に戻った昨年オフ、体やバットの形状を戻しました。自分がやれることの範囲を、元の範囲に戻したという感覚です」

 ――原点に戻った。
 「元々ホームランを狙って打つことはなかったけど、向こうでは狙って振りにいかないと入らないと感じていました。日本だと、例えば昨季の5本は狙って振ったという打席じゃなかったけど、入ることがあるわけですよね。体をコントロールし、しっかり捉えることに、もう一度フォーカスしよう…と」

 ――打撃のスタイルを戻すと同時に、オフはミートポイントを前に戻す…とも。
 「これは意識の問題なんで。自分が気持ちよくスイングできる位置を確かめるときに、どこに(ポイントを)置くかっていう感じなんですよ。その打ち方でまだ実戦をやっていないので。バットが出てくるのか、間に合わないのか。あとは結果です。なりたくないアウトが増えたら、難しいかな…となるかも」

 ――なるほど。
 「(打撃コーチの)朝山さんにも“いまの感じでいきながら(後ろに)戻そうと思えば戻せるんだろ?”と聞かれましたけど、多分戻せるんです。2ストライクになって、前で打つわけにはいかないから、多分できる。ただ、勝負をかける打ち方が去年はできなかったんですね。秋山翔吾という選手像への期待に応えないといけないと思っていたので、どちらかといえば受け身で、詰まってハンドリングで打とうという意識が強かったですね」

 ――それはコンディションにも関係が?
 「あると思います。体力的に足りなかったですね。しんどい練習をして修正するタイプを自認していますが、そこに割けるだけの体力がなかったです」

 ――昨季の打率・265は不本意でしょう。
 「外野じゃダメ。試合に出ちゃダメと思うぐらいの数字です」

 ――35歳のシーズン。ヒットメーカー復活に期待しています。
 「そうありたいですね。もうベテランだからゆっくり…なんていうんじゃなく、若手とも遜色ない、でも、キャリア、経験はあるという。僕は結構ラッキーなキャラづけをしてもらったと思っているんですよ。若手がランニングで“アキさん、行きましょう”とか言ってくれる。そこで言い合えれば、言う分だけ自分に投影される。自分を律しながら頑張りたいと思います」

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2023年2月7日のニュース