【内田雅也の追球】「技心体」のチームプレー まずは「息を合わせる」技術

[ 2023年2月7日 08:00 ]

チームプレーの練習後、円陣を組む阪神ナイン (撮影・後藤 大輝) 
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 日本に「チームプレー」という考え方が定着したのは、アル・カンパニス著『ドジャースの戦法』(ベースボール・マガジン社)を指南書とした巨人が9年連続(1965―73年)日本一を達成したことが大きかった。それまで日本では「チームワーク」という言い方が広まっていた。

 そのV9巨人の参謀役だった牧野茂はドジャースから直接学び「彼らはチームワークとは言わない」と語っている。1980年3月発行の労働省(現厚生労働省)広報室編『労働時報』にある。

 「チームワークはあとからついてくるものですね。巨人は(昭和)40年から勝ち続けたでしょう。すると、勝てば勝つほどチームワークができて、選手が結束した」。一方の「チームプレー」については「個人が果たさなければならない義務」を「総合化」したものだと解説している。

 ヤンキース黄金時代の選手はふだんは口もきかないが、グラウンドでは見事な連係プレーを見せたといった逸話もある。

 チームプレーは技、チームワークは心なのだ。「心が先か技術が先か」との問いに牧野は「技術」と答えている。

 阪神監督・岡田彰布も「心技体」ではなく「技心体」が持論だ。著書『動くが負け』(幻冬舎新書)にも<まず技術がありきで、その次が精神面の充実、そして最後に体力がくる>と書いた。

 さて、この日行ったメニューに「チームプレー」があった。つまり技術の練習である。雨のため宜野座ドームで投手と内野手がけん制やサインプレーを1時間行った。前日行った際、岡田は「全くダメ。毎日やらなあかん」と話していた。

 問題は投手と内野手の「呼吸」なのだと岡田は言う。技術ならコツがありそうだが「息を合わせる」のは簡単ではない。

 「誰にでも通用するコツなんかない」と天台宗の大阿闍梨(あじゃり)、酒井雄哉が語っている=『この世に命を授かりもうして』(幻冬舎ルネッサンス新書)。地球一周にあたる約4万キロを7年かけて歩く比叡山の千日回峰行を2度満行した。「うまく歩くコツ」を「とにかく呼吸を合わせることですよ。そうしたら足が自然に前に進みますよ」と話している。

 投手も内野手も新布陣で臨む。それぞれ個人がまずは「息を合わせる」技術、次いで心が問われている。 =敬称略=
 (編集委員)

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2023年2月7日のニュース