センバツの木更津総合戦で鈴木三塁塁審が名ジャッジ J1広島・青山敏弘の姿から学ぶ「首振り」の重要性

[ 2022年3月26日 15:41 ]

第94回選抜高校野球大会第7日第2試合 2回戦   木更津総合3―4金光大阪 ( 2022年3月25日    甲子園 )

<第2試合 金光大阪・木更津総合>サヨナラ押し出し死球を与え、涙する金綱(中)(撮影・椎名 航)
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 2011年から6年間務めたNPB審判員時代に思っていた。「なぜ、誤審の時だけ大きく報道されるのだろう。ファインジャッジだってたくさんあるのに…」。だから記者となった今、センバツ大会で生まれたファインジャッジを紹介しようと思う。

 木更津総合が2回戦で金光大阪に延長13回タイブレークの末、サヨナラ負けを喫した。0―1の8回の攻撃。無死一、二塁からの左前打で、二塁走者が三塁を回り転倒した後に三塁へ帰塁した。その際、三塁ベースコーチと走者に接触があり、鈴木三塁塁審は「肉体的援助」を宣告して当該走者をアウトに。1死一、二塁で試合を再開した。

 この場面を規則と実際の審判員の動きから深掘りしたい。

 まず、適用された規則は【公認野球規則 6.01a(8)】だ。ここには「三塁または一塁のベースコーチが、走者に触れるか、または支えるかして、走者の三塁または一塁への帰塁、あるいはそれらの離塁を、肉体的に援助したと審判員が認めた場合」にアウトになると規定されている。

 ここで重要なことは「援助したか」という点だ。ベースコーチと走者が触れれば、即アウトになるわけではない。例えば、走者と「ストップ」させようしたベースコーチが接触しても、そのまま本塁まで駆け抜けた場合は「援助」ではないためアウトにはならない。今回のケースは三塁に戻ろうとしている走者を後ろから押したので判定通り「アウト」が正しい判定となる。

 ファインジャッジは鈴木三塁塁審の優れた審判技術から生まれた。審判員の基本は「ウォッチ・ザ・ボール」。ボールから目を離さないこと。だが、この場面は送球の行方と同時に触塁、三塁ベースコーチの動きも見る必要があった。鈴木審判は外野からの返球に視線を送りつつ、首を振って「援助したか」を確認していた。同時に発生するプレーを見極めるために必要な「首振り」で一瞬のプレーを見逃さなかった。

 私はNPB審判員の現役時代、サッカー・J1広島の試合を観戦したことがあった。絶妙なスルーパスを送る広島のボランチ・青山敏弘選手に審判員との共通点を見つけた。青山選手を観察していると、常に首を振って周りの状況を把握していることに気づいた。同時に動くボールと選手を把握するためにやっていたのだろう。改めて審判員として「首振り」の重要性を再確認した。
 
 何事もヒントは意外なところに落ちているかもしれない。(柳内 遼平)

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2022年3月26日のニュース