鬼の目にも涙 横浜クラブ史上最高の3位に導いた沢木監督「チーム愛が出てきた」ラグビーリーグワン

[ 2023年5月20日 02:04 ]

ラグビーリーグワン プレーオフトーナメント3位決定戦   横浜26―20東京SG ( 2023年5月19日    東京・秩父宮 )

<東京SG・横浜>試合後、沢木監督(左)と握手を交わすデクラーク(撮影・篠原岳夫)
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 トップリーグ時代を含めて初の4強入りを決めていた横浜が、プレーオフ常連の東京SGを26―20で下し、過去最高となる3位でシーズンを終えた。沢木敬介監督(48)にとっては、就任3季目で初の古巣撃破。横浜にとっても旧キヤノン時代を含めて初勝利で、クラブ史にその名を刻んだ。

 鬼の目にも涙――。

 卓越した戦術眼とともに、厳しい指導で知られる沢木監督の目が潤んだのは、会見中盤での一幕だった。23人の試合登録メンバー外の選手を「ライザーズ」と呼ぶ横浜。この縁の下の力持ちたちへの思いを問われると、指揮官はこう語りながら、次第に目は潤み、言葉を詰まらせていった。

 「昨日の練習後もメンバー外が泣いていて、凄くチーム愛が出てきて。みんなで勝ち取った勝利じゃないですか」

 就任2季前の18~19年シーズン、チームはトップリーグ時代では過去最低の12位に沈んでいた。リーグ屈指の充実した練習拠点施設を持ちながら、成績が伴わない。指導を開始した直後、沢木監督自身も「ここは12位だなと思った」という。サントリーで監督を務めた16~18年には、リーグ2連覇へと導いた知将が感じた常勝軍団との決定的な差は、「(選手の)自分への投資、学ぶ姿勢」だったという。

 この試合でも活躍したCTB梶村祐介主将、WTB松井千士ら同じくサントリーからの移籍組は、古巣時代と比較して「優しくなったと思う」と声をそろえる。それでも練習や試合でスタンダードを高く設定し、厳しい叱咤激励をいとわない。選手がどれだけ活躍しても手放しでほめずに、必ず憎まれ口を一くさりは入れる。シーズン終盤までライザーズの一員として過ごしながら、レギュラーシーズン残り2試合から先発をつかみ、この日は2トライを挙げた松井に対しても、「(活躍できたのは)松井ではなくて、僕の我慢強さ(のおかげ)ではないか」と話した。

 満足するには早い。だが、次のステージにステップアップするための土台は築いた。プレーオフ常連の一角を崩し、日本ラグビーに新たな時代の到来を予感させた横浜と沢木監督。「全てですよ。全てあると思う」。成長の余地を問われ、そう答えた指揮官もまた、名将への階段を一つ上がった。

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