“ヨキッチ・ストッパー”となった八村とジェームズとの違い 求められる役割分担の変更
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【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】レイカーズ対ナゲッツの西地区決勝第2戦が終わってから10分後。AP通信が配信した記事の中にはこんなくだりがあった。
「第1戦の第4Qでの八村のヨキッチに対する素晴らしいディエンスを見た人の多くは、レイカーズのハム監督が第2戦ではきっと彼を先発させると信じていたはず。しかし結局、ベンチスタートだった」
つまり敗れたとは言え、第1戦の第4Qに10分間プレーしたナゲッツのニコラ・ヨキッチ(28)を3得点(すべてフリースロー)に抑え込んだレイカーズの八村塁(25)は、過去2シーズン連続でMVPとなった相手の大黒柱が先発する以上、最初からコートにいるべきだろうという見解だった。
この日、レイカーズはフォワードのジャレッド・バンダービルト(24)が3試合ぶりに先発。しかし17分の出場で4得点と2リバウンドに終わり、出場時間帯のチームスコアはマイナス10だった。
八村は第1Qの8分すぎからコートに登場。第1戦とは違って、いきなりヨキッチの前に立った。前半ではボールを持ったヨキッチと8回向かい会ったがシュートを決められたのは2回。アシストとオフェンス・リバウンドを1つずつ許しているが、その一方で自身のオフェンスではシュートを7本連続で成功させて前半だけで17得点(試合全体では21得点)を稼いだのだから見事としか言いようがない。
サイズの異なる選手が相手の大黒柱をマークすれば、ディフェンスだけでエネルギーを削り取られるはずだが、八村には一切、そんなネガティブな側面はなかった。しかもスポーツ専門局のESPNによれば、ナゲッツのマイケル・マローン監督(51)は前日の“フィルム・セッション”で、第1戦でヨキッチを苦しめた八村のプレーを選手たちに見せて、傾向と対策を講じていた。過去にも76ersやウォリアーズがサイズの違う選手がヨキッチをマークしていたこともあって「目新しいことではない」と、分析した上で安心感をアピールしていたのだが、その相手方の読みを上回るパフォーマンスだった。
一方、レイカーズの大黒柱、レブロン・ジェームズ(38)は第2戦では40分出場して22得点、9リバウンド、10アシスト。もう一歩でヨキッチ同様にトリプルダブルだったので、そこそこ頑張っていたのだが、第3Q終盤で八村から“ヨキッチ・ストッパー”の役目を受け継いだあたりから精彩を欠き始めた。ダービン・ハム監督(49)は八村の調子の良さを実感して、負担の大きいヨキッチ担当を免除?してやったのだと思うのだが、第4Qになるとその配慮と思惑は結果として実らなかった。
なぜなら勝負どころの第4Qでジェームズが1分47秒、2分10秒、4分24秒と3点シュートを3本連続で失敗。八村は同じ職務の遂行においてオフェンスでもエネルギーを維持できたが、38歳のジェームズはそうではなかったように見えた。
プレーオフ通算280試合目を迎えたジェームズは第2戦では3点シュートを6本すべて失敗。今ポストシーズンの成功率は23・3%で、これは2015年の22・7%に次いで2番目に低いアベレージになっている。その一方で、レギュラーシーズンでの3点シュート成功率が31・9%だった八村は現時点で54・5%(33本中18本)。フィールドゴール(FG)の成功率もうなぎ登りで、1回戦(対グリズリーズ)が56・9%、地区準決勝(対ウォリアーズ)が57・1%だったのに対して地区決勝の2試合では76・2%にまで跳ね上がっている。
にもかかわらず、この日の第4Qで八村はたった1本のシュートしか放っていない。そこにはどうしても通算得点の歴代新記録を樹立しているスーパースターに土壇場ですべてを任せるという、昔からNBA全体で存在している“運命の決め方”が見え隠れしている。
1990年代、トレイルブレイザーズの屋台骨を支えていたクライド・ドレクスラーが大事な試合の大詰めで速攻に出た際、並走していたバック・ウィリアムスにノールックでパスをしたことがある。これに対してNBAの選手会長も務めたことがあるウィリアムスは「このチームはお前のものだ。最後は自分で決めるんだ」とシュートに持ち込まなかったドレクスラーの姿勢を批判。このような考え方はどのチームにも浸透していた。
しかし2000年代に入って戦術が劇的に変化。3点シュートへの依存度が増え、大黒柱への大詰めでの“全権委任”といった昔ながらのオフェンス・スタイルは徐々に影を潜めてきた。実際、東地区の第8シードとしてここまで勝ち残っているヒートは、ジミー・バトラー(33)という絶対的な切り札を擁しながら、最後の局面ではその日にいいタッチでシュートを打っていたチームメートが要所で果敢に3点シュートを放っている。それが躍進の要因でもある。
さてレイカーズはどこまで“キング”にこだわるのか?ここまでの“通信簿”を見る限り、第4Qで最もシュートを打つべき選手は背番号28。ハム監督は選手の起用方法などを見ていると柔軟に対応する指揮官だけに、残された最後の課題?となった第4Qという“聖域”での新たな采配に期待したい。
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった20238年の東京マラソンは5時間35分で完走。
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