岡崎真氏 羽生はフィギュアスケートを国民的スポーツに押し上げた、男子の競技人口増加

[ 2022年7月20日 05:25 ]

羽生結弦 プロスケーター転向

プロスケーター転向を発表した羽生
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 【緊急連載 羽生結弦のレガシー】五輪連覇など数々の輝かしい実績を残してきた羽生が、競技会の一線を退く決断をした。ジュニア時代から世界のトップを走ってきたスケーターは、フィギュアスケートだけでなくスポーツ界に何を残したのか。緊急連載「羽生結弦のレガシー」で検証する。1回目はスポニチ本紙評論家でISUテクニカルスペシャリストの岡崎真氏(46)。

 羽生の会見からは、フィールドがアマチュアからプロに変わるだけで、これからもずっと走り続けるんだという妥協を許さない姿勢が見て取れた。「僕はこれからも突っ走っていきます。進化し続けますよ」という決意表明のように聞こえたし、4回転半ジャンプに対する意欲も口にした。きっと、燃え尽きたから、限界を感じたからという理由ではないはずだ。ただ、アマチュアとして競技を続ける限りは常に他の選手と勝負しなくてはならない。だんだんモチベーションを保ち続けるのも難しくなってくるし、その辺のしがらみを一切払拭する決断だったのだと思う。

 プロになってから1年目、2年目は解き放たれたようにどんどんうまくなる選手が多い。ルールで強制される制約がプロになればなくなるので、自分との闘いの中で自分がやるべきことを自分で取捨選択して、余裕を持って取り組むことができる。「プロのアスリート」という言葉からも、一アスリートとして、これからもストイックに続けていきたいという彼なりのこだわりが感じられる。

 彼はノービスの頃から華があって凄く人を引きつける魅力があった。ノービスからエリートコースに乗って、これまで一度もトップから崩れ落ちたことがない。もちろんケガもあったし彼なりに挫折はあったのだろうが、表彰台に乗り続け、ジュニアでも世界一になり、五輪で2度も金メダルを手にした。会場に来るファンも増え、フィギュアスケートを国民的スポーツに押し上げた功績は大きい。

 選手としての羽生は、全てにおいて秀でているのが最大の特長だった。ジャンプはいいがスピンがやや苦手だったり、演技点が伸び悩んだりする選手も多いが、彼は全部がSクラス。そこが一番凄いところだと思う。

 合宿に来るノービスの子供たちは以前より確実に男子が増えており、憧れの選手を聞くと、多くが「羽生選手」と答える。これからの日本フィギュアスケート界を考えても彼が残した功績は大きく、プロになっても引き続き注目を集めそうだ。(ISUテクニカルスペシャリスト、プロコーチ)

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2022年7月20日のニュース