坂本が初世界女王「ドバーッと涙が出てきた」真央以来、日本勢6人目

[ 2022年3月27日 05:30 ]

フィギュアスケート世界選手権第3日 ( 2022年3月25日    フランス・モンペリエ )

金メダルを獲得した坂本花織(撮影・長久保 豊)
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 女子フリーが行われ、北京五輪銅メダルの坂本花織(21=シスメックス)がフリー155・77点、合計236・09点とも自己ベストで初制覇した。

 トレードマークの笑顔が、涙でくしゃくしゃになった。坂本は表彰台の頂上で君が代を聞くと、優勝の実感がジワリとこみ上げてきた。「ここまで来るのに大変な思いをたくさんしたので、頑張ってきて良かったなと思った瞬間にドバーッと涙が出てきた」。表彰式で見せた涙は、積年の思いの結晶だった。

 今できる全てをモンペリエのリンクにぶつけた。最終滑走の緊張感の中、序盤の3回転ルッツや3回転フリップ―2回転トーループを決め、冷静になれた。全ジャンプを決め、スピン、ステップも最高のレベル4を獲得。表現力を評価する演技点も9点台でそろえた。SP、フリー、合計点全て自己新記録は「奇跡」と笑った。

 激動の一日だった。直前のヘンドリックスの演技途中、舞台裏にまで観客の大歓声が嫌でも耳に入ってきた。「怖すぎる…」。その言葉を中野園子コーチに打ち明けた瞬間、涙が流れた。シニアになって初めての感情だった。

 2位以内に入らなければ日本の来年の出場枠が減る窮地で、重圧がのしかかった。五輪後は「燃え尽きた」状態。演技の通し練習でミスなく滑れたのが、渡仏前日の18日。現地入り後も、なかなか調子が上がらなかった。不安と恐怖の充満する坂本に、中野コーチから言葉が飛んだ。「必死ほど強いもんはない!」。その言葉を聞いて腹をくくった。「もう思う存分泣いたし、氷に乗ったらやるしかない」。あとは栄光へ一直線だった。

 涙、涙、涙の先に、歓喜の瞬間が待っていた。強豪ロシア勢が欠場したが、日本勢では6人目の世界女王となった。五輪銅メダリストに新たな箔(はく)が付き、今後は追われる立場になる。4回転ジャンプ習得も視野に入れ、さらなる高みを目指す。「日本の女子を引っ張っていけるような存在になっていきたい」。最高のシーズンを締めくくり、坂本がまた強くなった。

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