坂本花織 ROC勢に割って入った 「燃え尽きた」どん底からはい上がってメダル圏内

[ 2022年2月16日 05:32 ]

女子SP、演技をする坂本花織(撮影・小海途 良幹)
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 女子の競技が15日に始まり、ショートプログラム(SP)では平昌五輪6位の坂本花織(21=シスメックス)が自己ベストを更新する79・84点をマークして3位発進となった。カミラ・ワリエワ(15=ROC)が82・16点で首位。初出場の樋口新葉(21=明大)はトリプルアクセルを決めて73・51点で5位となった。あす17日にフリーが行われる。

 重圧を乗り越えると、万感の思いがこみ上げてきた。最終滑走を終えて涙した坂本が、スコアを見た瞬間、また泣いた。全てのジャンプを含む完璧な演技で自己ベストを更新。ワリエワ、シェルバコワに次ぐ79・84点で3位につけた。

 「ロシア(ROC)の3人と一緒の場所で滑るのが怖くて…。本番前も膝の震えが止まらなかったし、無駄に心拍数が上がった。3強が目の前にいるとなると、空気が全然違う。それが一番の緊張のもとだった。最後までやり切って、先生(中野園子コーチ)の顔を見たらホッとして泣いちゃいました」

 緊張感に押しつぶされそうになりながら始まったSP「グラディエーター」。その苦しさを感じさせることなく、冒頭のダブルアクセル(2回転半)を難なく決める。踏み切り違反を取られることが多い3回転ルッツ、そして後半もフリップ―トーループの連続3回転も成功。ROC勢の一角であるトルソワを上回ってメダル圏内につけた。

 「燃え尽きた…」

 笑顔を振りまく裏側で、2年前はどん底にいた。無欲のまま初出場したのが平昌五輪。その後、18年末の全日本選手権で初優勝を飾りながら、翌年はシニア転向後ワーストの6位に沈んだ。19―20年シーズン。試合で結果が出ず、練習でもミスが続いた。気持ちがついてこなかった。

 「成長が感じられなかった1年。スケート人生が終わっちゃった」

 情熱を取り戻せない中、世界はコロナ禍に見舞われる。自粛生活が続き、坂本自身も約1カ月半、リンクに上がることはできなかった。そこで突然、スイッチが入った。「みんなが滑れていない状況。だから“ここで頑張れば逆転できる。今季は頑張ったもん勝ちやし、この1カ月半、頑張らなあかん”と。そこで気持ちが変わった」。氷を離れていたことで、スケートをできる喜びも思い出した。ガムシャラだった昔のように自分と向き合い、上昇曲線を描いて北京へとたどり着いた。

 団体戦を終えた後、ワリエワのドーピング問題が起きたことから、フィギュアスケート界は違った意味で注目された。だが、この五輪に懸けてきたからこそ、目の前だけに集中した。

 「周りが今、いろいろ言っているけど、自分のやることは変わらない。SPもフリーもパーフェクトにやることだけを考えて。いらない考えを省こうと思ったら、それが一番、最初になくなっていく。特に今は何も考えずにいます」

 あす17日に迎えるフリー。今季、難易度の高さから一度は手放そうとしたプログラムで挑む。「この4年間、頑張ってきた成果をしっかり出し切りたい」。集大成を最高の舞台で披露する。

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