上野、3連続K零封 125日ぶり登板に「価値ある1イニング」

[ 2019年8月31日 05:30 ]

4回から登板し無失点の上野(撮影・沢田 明徳)
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 日本代表のエース上野由岐子投手(37=ビックカメラ高崎)がチェコ戦で、顎の骨折から125日ぶりに登板し、1回1安打無失点、3連続三振を奪った。3番手で登板し、最速118キロをマークした。ファンから“お帰りコール”が起き、「価値のある1イニングだった」と復帰への第一歩をしるした。

 上野の偉大さは登板前のブルペンに表れた。初回から準備を始めた。しばらくすると、女子中学生とみられる人だかりができた。観客数人も試合そっちのけで、肩ならしを見守った。4回の出番には、大きな拍手。ヒーローインタビューでは、ファンから「お帰り」の声が響いた。

 「投球は全然だけど、今日はマウンドに立つことに意味があった。心配してくれたファンの方に元気な姿を見せられた。声援を聞いて、戻って来られて良かったと思った。価値のある1イニングだった」

 08年北京五輪金メダルの立役者の自己採点は「30点」と低かった。それでも力はずばぬけている。125日ぶりの実戦で、最速118キロ。世界トップクラスの球速を投げた。

 先頭にボテボテの内野安打を許した後、3者連続三振。13―0(4回コールド)が物語るように、チェコとは力の差があったとはいえ、ほぼ直球一本で抑えることは、誰もができる芸当ではない。

 4月27日の国内リーグ戦で顎に打球を受け、手術をした。流動食生活で一時は体重が5キロ減った。長い休養を経て、力を入れて投げ始めたのが7月。その最初の一球は、想像の範囲内の直球を投げられたという。ブランクによる感覚の変化を問われたが「たかが1、2カ月休んだくらいで(感覚を忘れる)薄い歴史ではないので。心配はしてなかったです」。

 31日には米国戦と台湾戦が控える。上野は2戦目の台湾戦に投げる予定。慎重かつ力強く、東京五輪へ歩んでいく。



 【「上野の413球」北京金の立役者】 04年のアテネ五輪では銅メダルを獲得。初戦のオーストラリア戦に先発して敗れたが1次リーグ最終戦の中国戦では完全試合を達成した。08年の北京五輪では準決勝の米国戦で147球を投げ完投も、延長9回の末、惜敗。同日の豪州戦でも延長12回171球を投げきった。さらに翌日の米国との決勝も先発マウンドに上がり95球で完投。悲願の金メダルを手にした。2日間3試合での「上野の413球」は年末の流行語大賞で審査員特別賞を受賞した。

 《上野激励メッセージに 渋野感激!》 ソフトボール好きを公言する女子プロゴルファーの渋野が、日本代表のエース上野からの「大変刺激をもらっています」というメッセージを受け「そんなこと言ってもらえるのは本当に光栄です。刺激をもらっているのは私の方なので頑張らないといけない」と恐縮した。上野はジャパンカップで復帰登板を果たしたが「見たい。テレビで放映してほしい。ぜひ」と興奮気味だった。

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2019年8月31日のニュース