羽生 今季初戦ヒヤヒヤ逃げ切り…ふがいなさに「火が灯った」

[ 2018年9月24日 05:30 ]

フィギュアスケート オータム・クラシック最終日 ( 2018年9月22日    カナダ・オークビル )

オータムクラシック最終日 男子フリー、演技を終え悔しそうな表情の羽生(撮影・小海途 良幹)
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 男子フリーが行われ、SP1位の五輪王者、羽生結弦(23=ANA)は165・91点のフリー2位にとどまったが、合計263・65点で逃げ切り、今季初戦を優勝で飾った。サルコーで転倒するなど4回転ジャンプ2つでミスが出て、得点は伸ばせなかった。今季は「楽しむ」をテーマに掲げていたが、低調な内容に悔しさをむき出しにした。

 伝説のプログラムの始まりとしては、とても納得できる出来ではなかった。ふがいない演技を終えた羽生は左手を下ろすと顔をしかめて、ほえた。「実力不足です。素晴らしいプログラムなのに、きれいな終わり方ができず、凄く申し訳ない」と悔しがった。

 幼い頃から憧れだった06年トリノ五輪金メダルのプルシェンコ(ロシア)の代表作「ニジンスキーに捧(ささ)ぐ」をアレンジした「Origin(オリジン)」。荘厳な曲に乗って、前半のループとトーループの2つの4回転ジャンプに成功した。しかし、中盤の4回転サルコーで転倒。さらに規定で基礎点が0・8倍になることを承知で「自分にでき得る最高のコンビネーションジャンプ」と4回転トーループ―トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を狙いにいったが、4回転が2回転になって連続ジャンプにできない失敗に終わった。

 ルール改正で30秒短い4分になり、要素をこなすためにせわしなく動かざるを得なかった。切れがなくなり「このプログラムに対する体力がない」。踏み切りと着氷の際に、昨季負傷した右足首に負担がかかる高得点のルッツは回避した構成にしており、練習も積み切れていない状態だった。

 SPの貯金で何とか逃げ切り、2月の平昌五輪以来7カ月ぶりとなる復帰戦を飾ることはできた。だが、同じクラブで練習する7歳下の後輩、車俊煥(韓国)に3・87点差と迫られた。五輪で2連覇を成し遂げて迎えた今季は結果にこだわらず「自分のために滑る」「楽しむ」ことをテーマに据えていたものの、心中穏やかではいられない。「今は勝ちたいしかない。これが一番自分らしいのかもしれない」。表彰式では自分より背の高い2人への対抗心からか背伸びするなどした絶対王者は、勝負への熱い気持ちをかきたてられた。

 次戦はGPシリーズ第3戦のフィンランド大会(11月2〜4日、ヘルシンキ)。「五輪が終わって抜けていた気持ちの部分でまた自分の中に火が灯(とも)った。本当に火を付けられたような状態。最短で強くなりたい」とまくし立てた王者の目は輝いていた。

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