【上水研一朗氏の目】機を見るに敏 初V逃すも可能性示した藤原

[ 2018年9月24日 12:00 ]

男子81キロ級決勝 サイード・モラエイ(右)を攻める藤原崇太郎。一本負けを喫し初優勝を逃した
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 機を見るに敏という表現が、藤原にはよく当てはまる。相手をしっかり観察しながら、何をしてくるか、弱点がどこなのかを探しだし、チャンスを逃さずに攻撃を仕掛ける。技の種類も豊富で、いろんな形で崩せるので相手に的を絞らせない。準決勝で一本を取った支え釣り込み足も、大外刈りに行くぞと見せかけてから。相手は一方を警戒すればもう一方で仕掛けられ、とてもやりにくいと感じたはずだ。

 決勝は敗れたが、相手を褒めるべきだろう。藤原も抱えての裏投げは得意だが、今回はモラエイの体幹が上回った。惜しむべきは技ありを奪った後、そのまま押さえ込みにいけなかったこと。それでも20歳という年齢、初出場であることを考慮すれば、堂々たる戦いぶりだった。

 現在の男子81キロ級は、世界を見渡してもまだ選手が出そろった感じはしない。休養中の選手、復活途上の選手、成長途上の選手が出てきて、来年の世界選手権(東京)では勢力図が見えてくるだろう。藤原ももう一段階レベルを上げる必要があるが、戦列復帰したリオ五輪銅の永瀬貴規もうかうかしていられない状況だろう。

 田代はアグベニェヌに屈したが、試合内容は前進している。相手の釣り手を突きながら、引き手もしっかり抑えられていた。相手が組み手を切ってきても、切らせなかった部分は大きな成長。最後は大内刈りで勝負に行き、抱えられての払い巻き込み。大内刈りに合わせる練習をしてきた可能性が高く、そこを練り直していけばさらに女王を追い詰められるだろう。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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