スーパーボウルで引退か…沈黙貫くマニング 散り際の美学

[ 2016年1月31日 11:05 ]

ブロンコスのQBペイトン・マニング (AP)

 NFLの王者を決める第50回スーパーボウルは2月7日(日本時間8日)にカリフォルニア州サンタクララで行われる。このビッグゲームに出場するブロンコスのエースQBペイトン・マニングは39歳。コルツ時代を含めて5度もシーズンMVPに選ばれ、スーパーボウルは自身2年ぶり4回目の出場となるのだが、おそらくこれが彼の現役最後のゲームになるだろう。

 この場におよんで「だろう」と書かなければならないのは、依然としてマニングが自身の去就に言及しないからだ。AFC決勝で対戦したペイトリオッツのビル・ベリチック監督(63)には「これが最後かもしれません」と語ったようだが、公式にはまだ一度もRetire(引退する)という言葉を口にはしていない。

 ただし先走る推測と推論に根拠がないわけではない。ブロンコスがここまで勝ち進んできたのはマニングの力ではなく、着実に地上戦でヤーデージを稼ぐRB陣の健闘と、リーグ屈指の守備陣に支えられてのものだ。マニングのパス・レーティング(効果率)は自身のワーストだし、パス成功率(59・8%)は新人だった99年シーズンに次いで悪い。今季終盤では足底筋膜炎と肋骨の打撲、肩の故障で6試合戦列を離れており全盛期のようなプレーは影を潜めた。

 同じような立場に置かれているのがNBAレイカーズのコービー・ブライアント(37)だが、彼はシーズン序盤で「今季限りで引退する」と宣言。ロードに行けばブライアントに対して敵チームのファンが声援を送るという引退興行的な光景が日常化している。もしかしたらマニングはこれが嫌だったのかしれない。98年のドラフト全体トップ指名選手としては、味方は味方、敵は敵の図式を最後まで崩したくはなかったのだろう。だから負けて今季の全日程が終了するまで、自らの意志を封じ込めているとも言える。

 NBAの「神」だったマイケル・ジョーダン(元ブルズ&ウィザーズ)は最初黙ってユニフォームを脱ぎ、「アイム・バック」というひと言で戻ってくると、二度目は「ドアは99%締まったが100%ではない」という言葉を残して去っていった。そして残った1%で現役復帰を正当化し、同じ言葉を残してまた去っていった。

 スーパースターの散り際は多種多様。マニングがスーパーボウルで対戦するパンサーズに勝ってそれを現役最後の試合にするならあまりにも格好が良すぎるが、ここまで沈黙を保っていきた男にとってはその美学を貫きたいのだろう。

 3月24日で40歳。さて最後の大舞台にはどのような結末が待っているのか?決戦の日はじりじりと迫っている。 (高柳 昌弥)

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