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【森保Jの26人】前田大然 持ち味「献身性」原点は母の支え

[ 2022年11月10日 04:30 ]

【森保Jの26人(8)】

前田大然
Photo By スポニチ

 FW前田にはサッカーから遠ざかった過去がある。山梨学院高1年の冬、素行不良で「出禁」となった。大阪府の自宅に訪れた監督から、退部と退寮を告げられた。監督の前では黙って涙を流しながら受け止めたが、帰るとすぐに母の幸枝さんに「残ってまたやりたい。みんなと一緒にやりたい」と静かに訴えた。

 戻れる保証はなかった。それでも復帰を諦めなかった。寮を出てマンションを借りる際の学校側の条件は、親が週に3日は滞在すること。大阪に自宅のある幸枝さんは片道8時間の夜行バスで数日置きに大阪と山梨を往復し、自身が不在の間に息子が食べる料理を作り置きして支えた。前田はパン屋で無償奉仕し、社会人クラブに練習参加して時を待った。1年後、部活に戻れることが決まった。復帰のタイミングは母の日に近かった。当時無敗を続けていた浦和ユースに勝ったという報告のLINEを、幸枝さんは「母の日のプレゼント」とかみしめて喜んだ。

 その後、山梨学院のグラウンドで見た息子のプレーは、以前とは大きく変わっていた。「守備であんなしてね、チームのために走るっていうのはあんまりなかったですもんね。初めて見たんですよ、そういう大然の姿って。その試合を見て涙が出たっていうのは覚えています」。前田は今も前線から献身的な守備を続ける。泥くさいスタイルの原点は、周囲に支えられた1年間にある。

 ◇前田 大然(まえだ・だいぜん)1997年(平9)10月20日生まれ、大阪府出身の25歳。山梨学院高から16年にJ2松本に加入。17年はJ2水戸、19~20年はマリティモ(ポルトガル)に期限付き移籍。20年夏に横浜に移籍。21年冬にセルティック(スコットランド)に移籍。東京五輪代表。国際Aマッチ8試合1得点。1メートル73、67キロ。利き足は右。

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2022年11月10日のニュース