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トルシエ氏 理想の次期指揮官は岡田監督!?

[ 2010年7月1日 12:02 ]

インタビューに答えるトルシエ氏

 【トルシエ氏 岡田ジャパン総括(2)】トルシエ氏は、岡田ジャパンのW杯南アフリカ大会も総括した。もっとも印象に残った選手にはGK川島永嗣(27)とFW本田圭佑(24)を挙げ、さらに4年後のW杯を見据え、理想の次期監督には岡田監督の続投を提言した。

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 岡田ジャパンはW杯を通じて守備の価値観を学んだ。より低いラインを保ち、徐々に前に進みながらボールを奪うという戦い方を続け、強豪にも簡単にゴールを許さなかった。守備ベースの強化には成功したと言える。そしてチームが一丸となり、モチベーションを高く戦うことの大切さも学んだ。1次リーグを突破し、好結果をもたらした要因の80%は、この2点に尽きると思う。
 印象に残った選手としては、本来、全員の選手を挙げたいところだが、GK川島、MF大久保、松井、FW本田の4人を挙げたいと思う。特に川島と本田は大きな発掘だ。松井も欧州でプレーを続けるだけの価値観を見せてくれた。チーム全体としても一発退場はなく、大会を通じフェアプレーを貫いた。テクニックの素晴らしさも随所に見せてくれ、世界に対し、ポジティブな印象を与え、専門家からも称賛の声が届いている。
 だが、しかし、これが日本の真のレベルかと言えば、それは違うと思う。カメルーン戦も、オランダ戦も、デンマーク戦も、そしてパラグアイ戦もどちらかと言えば、日本はダークホース的な存在だった。日本が勝つこと自体がサプライズであり、サプライズに対する専門家の評価は、他の強豪国に対するそれとは異なってくるからだ。
 日本にとって、本当の課題はまだクリアされていない。外国でプレーする選手が圧倒的に少ないという現状は変わっていない。今回、パラグアイ戦に敗れたのも、経験不足に起因するところは少なくない。決勝トーナメントに残った他国と比べても、日本の真の実力はガーナ、パラグアイより下に位置するだろう。まだ世界のトップ10に入る力がないことを忘れてはいけない。「勝利への道のりは平たんではない」。未来の日本代表にはこの言葉を贈りたい。
 パラグアイ戦後、岡田監督が退任を申し出たと聞いた。だが、私は次の監督も岡田さんでよいのでは、と思っている。新しい監督がくれば、またゼロからのやり直しになるからだ。パラグアイ戦こそ大胆さを欠いたが、W杯全体を通じ、本田の1トップをはじめ、松井の右サイド、阿部のアンカー、GK楢崎正剛、MF中村俊輔をベンチに置くという勇気が求められる選択を下し、W杯の成功に導いた。もう少し日本代表の面倒を見てやってはいかがだろう。どうか、もう一度、頭を冷やして考え直してほしい。

 ◆フィリップ・トルシエ 1955年3月21日生まれ、パリ出身の55歳。93年からナイジェリア、ブルキナファソ、南アフリカなどアフリカ諸国の監督を歴任。卓越した手腕で白い呪(じゅ)術師の異名を持つ。98~02年に日本代表監督。02年W杯ではフラット3という3バック布陣で日本を初の決勝トーナメントに導いた。その後もカタール、モロッコなど代表監督を歴任し、07年12月からJFL・FC琉球の総監督。現役時代のポジションはDF。

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2010年7月1日のニュース