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トルシエ氏 決勝Tは攻撃的に行くべきだった

[ 2010年7月1日 12:03 ]

14W杯に向けて日本代表に「勝利は長い道のり」とメッセージを贈るトルシエ氏

 【トルシエ氏 岡田ジャパン総括(1)】元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏(55=FC琉球総監督)が30日、120分間の死闘の末にPK戦でパラグアイに敗れた日本代表を徹底分析。決勝トーナメントは1次リーグとは違う戦い方をすべきだったと指摘した。さらに下馬評を覆し、ベスト16まで駒を進めた岡田ジャパンのW杯を総括。次期監督には岡田武史監督(53)の「続投」という仰天プランを提言した。

 トルシエ氏は苦杯を喫したパラグアイ戦も勝利のシナリオは描けたと言う。大胆さに欠け、1次リーグと同じ戦術で臨んだ岡田ジャパンの采配をしきりに悔やんだ。
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 残念ながら、パラグアイ戦の日本代表は100%の力を出し切れなかった。これまでW杯8強進出の経験がなく、達成すれば歴史的な出来事となるシチュエーション。重圧の中、選手の足は止まり、前には出ていけず、リスクを冒さない気持ちが強くなっていた。もちろん、DF駒野友一のPK失敗に責任はないが、たった1つの失敗で試合に負けた。勝つべきシナリオを書けたはずなのに、だ。
 細かく言えば、まず日本は1次リーグを通じて自信を積み重ねた。そういうチームは攻撃時に多少守備が崩されても、いい試合運びができるのだが、それをしなかった。引き分けても次のある1次リーグと、負ければ終わりの決勝トーナメントは明らかに性質が違う。その試合ごとにアプローチは異なり、違う布陣、戦術が求められるはずだが、岡田監督は4試合目も同じ先発メンバーを組んだ。その点で大胆さが足りなかったと思う。
 そもそも力関係から言えば、パラグアイに主導権を握らせるべきではなかった。日本がゲームを支配したのは既に後半20分が過ぎたころ。岡田監督はいよいよリスクを冒し、FW岡崎慎司(←松井)、玉田圭司(←大久保)、MF中村憲剛(←阿部)を投入した。直後から本田圭佑を含めた前の4人で攻撃のリズムは好転したが、結論から言えばタイミングが遅すぎた。最初から、その形で良かったと思う。さらに終盤の本田は疲労も目立ち、岡崎にとって右MFは経験の乏しいポジション。机上の理論ではあるが、私なら本田をトップ下に下げて岡崎を1トップ、玉田を左、中村憲を右サイドに置いただろう。もっと言えば、サイド攻撃の起点となる松井を下げたりはしなかった。
 1次リーグでは素晴らしいパフォーマンスを見せた本田だが、その結果、パラグアイ戦では常に2人のDFから徹底的なマークを受け、本来はFWでないことを表す結果となってしまった。MF松井大輔も1対1でドリブルを仕掛けなければならないシチュエーションに迫られていた。攻撃面で期待した2人だが、DF長友佑都、駒野というサイドバックに積極的な仕掛けが見られず、サポートの欠如から苦戦を強いられた。
 岡田監督は1次リーグを突破し、その自信とメンタルに基づき、先発メンバーを決めたのだろう。そして快勝したデンマーク戦のFKのように、セットプレーから勝機を見いだそうとした。その結果、攻撃にダイナミックさを欠く、寂しい結末を招いた。これが初めて8強にトライする重圧なのだろうか。日本は序盤から主導権を握るべきだったのだ。相手との力関係を見て、自分たちの力をプラスにするにはどうすべきか。選手起用も、戦術も、もっと大胆になるべきだった。

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2010年7月1日のニュース