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【1973年2月】学生街の喫茶店/ガロ バンドの亀裂を深めた皮肉な大ヒット曲

[ 2012年2月4日 06:00 ]

 ★73年2月ランキング★
1 学生街の喫茶店/ガロ
2 女のみち/宮史郎とぴんからトリオ
3 中学三年生/森昌子
4 女のねがい/宮史郎とぴんからトリオ
5 ふたりの日曜日/天地真理
6 喝采/ちあきなおみ
7 ひなげしの花/アグネス・チャン
8 恨み節/梶芽衣子
9 あなたの灯/五木ひろし
10 女の子なんだもん/麻丘めぐみ
注目早春の港/南沙織
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【学生街の喫茶店/ガロ】

 たとえメンバー同士がギクシャクしていても、ヒット曲が出るとそれが潤滑油となり、バンドは妙にまとまりいい方向に進むものだが、80万枚をセールスした1枚のレコードは3人組のグループ「ガロ」にとって、亀裂を深める決定打となってしまった。

 学生運動の終えんを告げるような歌詞に、やや気だるい感じのメロディーが印象的だった「学生街の喫茶店」をリリースしたのは72年6月。実はレコードのB面だった。それがTBSラジオの「ヤングタウン・TOKYO」の今月の歌にA面の「美しすぎて」を差し置いて選ばれた11月ごろからにわかにリスナーの支持を得始めた。

 レコード店にはタイトルをはっきり分からず、歌い出しの「君とよくこの店に来たものさ」を口ずさんで店員に商品を探してもらうという光景が見られ、売り上げはうなぎ上り。発売元のコロムビアでは、年末にジャケットはそのままで「学生街…」を急きょA面にしてプレスし直した。

 が、メンバーの気持ちは複雑だった。3人が3人とも曲作りをするガロにとって、やはり自分たちで作ったオリジナルで売れたいという気持ちが強かった。「学生街…」にしても、アルバムに入れた1曲からのシングルカットだったが、アルバムに入れるのもレコード会社の意向で渋々というのが本当のところだった。

 年明けの1月にテレビ出演して人気が爆発。2月にヒットチャート上位に食い込んだが、この時ボーカルの大野真澄が十二指腸潰瘍で入院。次々と入るスケジュールを残りのメンバー2人でこなした。今でも音楽活動を続けている大野が「売れた実感があまりない」と話すのも、オリコンで7週連続1位のころに入院生活を余儀なくされていたからだった。

 療養中に2人のメンバーとの距離を感じた大野だが、さらに大野抜きで新曲のレコーディンググが進んでいたのもショックだった。もともと60年代から70年代に人気だった米ロックバンド「CSN&Y」が好きで集まった3人。それ以外に連帯のようなものはあまり感じたことはなく、それぞれが独自の音楽の世界をもっていたこともあって、解散の2文字はよりクローズアップされた。

 73年は「学生街…」に続き「君の誕生日」「ロマンス」などもヒットし、日本有線大賞の新人賞やレコード大賞の大衆賞などを受賞。年末には紅白歌合戦に出場するなど、解散を口にできる雰囲気ではなく、その後もバンドは続いた。76年3月のステージを最後に解散。何度か限定で再結成されたが、メンバーの1人自殺し、オリジナルの「学生街…」は聴くことができなくなった。まさに「時は流れた」のである。

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