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【1993年2月】ぼくたちの失敗/森田童子 ヒットドラマ主題歌に忘れかけていたあの歌声

[ 2012年2月2日 06:00 ]

 ★93年2月ランキング★
1 負けないで/ZARD
2 優しい雨/小泉今日子
3 慟哭/工藤静香
4 もっと強く抱きしめたなら/WANDS 
5 ぼくたちの失敗/森田童子
6 KISS ME/氷室京介
7 世界中の誰よりきっと/中山美穂&WANDS
8 がじゃいも/とんねるず
9 渡良瀬橋/森高千里
10 ロード/THE 虎舞竜
注目おさえきれない この気持ち/T―BOLAN
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【ぼくたちの失敗/森田童子】

 30代後半から40代には懐かしい歌声だった。10、20代は恐らく初めて聞く衝撃的な歌声だった。

 TBSドラマ「高校教師」の主題歌に選ばれたのは、70年代を中心に活動した女性歌手森田童子の「ぼくたちの失敗」。76年発売のアルバムに収録された曲だった。か細いつぶやくようなボーカルに切ないメロディー。ある男性教師と女子高生が禁断の恋に落ちて行く物哀しいドラマは、レイプシーンなどもあって話題となったが、同時に「この主題歌を歌っているのは誰?」と森田が一躍脚光を浴び、レコード会社には連日問い合わせが殺到した。

 実はこの時点で森田は引退していた。歌っている時から素性がほとんど分からず、発売から17年を経過してのブレークに「今は主婦をしている。何で今ごろ…」と知人に話したというが、それほど森田童子の存在は日常の中で忘れかけられていた。

 「ぼくたちの…」を主題歌に据えたのは、「高校教師」の伊藤一尋プロデューサーと脚本の野島伸司氏だった。「最近、いかにも歌を売らんかなという状況があって、鼻につくものがあった。二人とも学生時代に森田童子を聴いていて、単純に好きだから、という理由で決めた」と伊藤プロデューサー。売れる、売れないは頭にない、シンプルな発想だったが、タイアップしてCDを売る、という手法に一石を投じたことは間違いなかった。

 CDシングルは70万枚をセールス、その後リリースされた森田童子のベスト盤も好調なセールスを記録した。が、森田が人前で歌うことはなく、カーリーヘアに大きなサングラスをかけた現役当時のモノクロ写真でイメージを膨らませるしかなかった。

 「童子」は芸名でなんでも時代劇のヒーロー「笛吹童子」から付けたと本人は数少ないインタビューで語っている。サングラスについては「人の目を見て話すのがとても苦手。人前で歌うのも恥ずかしいから」。もともと歌手志望ではなく、友人の死をきっかけに歌いだしたという。

 「ぼくたちの…」もそうだが、森田の歌詞の中には「ぼく」ということばがよく出てくる。男子を指しているのではなく「私たち」という意味で使っているという。「過ぎ去ったものを温かく見つめていたい」と森田はかつて語っていた。その優しさが歌声だけでなく懐かしい青春を思い出させるのだろう。

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