365日 あの頃ヒット曲ランキング 2月

【1985年2月】そして僕は途方に暮れる/大沢誉志幸 作曲家から歌手として世に出た第一歩

[ 2012年2月23日 06:00 ]

★85年2月ランキング★
1 天使のウインク/松田聖子
2 熱視線/安全地帯
3 ユー・ガッタ・チャンス/吉川晃司
4 ふられ気分でROCK’NROLL/トム・キャット
5 俺ら東京さ行くだ/吉幾三
6 そして僕は途方に暮れる/大沢誉志幸
7 リ・ボ・ン/堀ちえみ
8 もっと接近しましょ/石川秀美
9 銀河の神話/田原俊彦
10 Young Bloods/佐野元春
注目Roanticが止まらない/C―C―B
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【そして僕は途方に暮れる/大沢誉志幸】

 商品を強調するより、イメージを大事にするCMを展開した日清の「カップヌードル」。80年代はいくつもの名作が飛び出したが、大沢誉志幸の歌うこの曲も独特の世界がかもし出す雰囲気に導かれ、興味を誘い、ヒットに結びついた。

 作曲家として先に名前が売れた。ソロとしてのデビューは83年だが、沢田研二の「お前にチェックイン」をはじめ、中森明菜のヒット曲「1/2の神話」、山下久美子の「こっちをお向きよソフィア」など、個性あふれるアップテンポ曲を次々と提供。ロック調でありながら、歌謡曲の要素も含んだ作品は、少年時代からジャンルを問わず、さまざまな音楽に接してきたためだった。

 しかし、本人はあくまで歌手。提供曲の売れたレコード枚数から「デビュー前に100万枚を売った男」などと、呼ばれたことに不本意でならなかった。それが嫌で自ら歌ったのだが、売れ筋の曲を書いてきた“ヒットメーカー”も自分の曲では斬新さを狙いすぎ、思うように世の中へ広がっていかなかった。資生堂のCMとのタイアップも実現し、専門家や音楽関係者の評価は高かったが、ヒットにはいたらず。84年の夏ごろは文字通り途方に暮れていた。

 大沢のスタッフの中では、「そして僕は…」は勝負曲だった。ソロデビューする前、「クラウディ・スカイ」というバンドのボーカルを務めていたが、実はそのときからメロディーは出来上がっており、大沢自身が詞をつけて、世に出そうと思えばいつでも出せる曲だった。ただ、詞はその後26万枚のレコードが売れたヒット曲とは全く違ったものだった。

 詞を新たに手掛けたのは女性詩人・銀色夏生。当時はまだ作詞家で、人気詩人になるのは後年のことだが、彼女がタイトルから詞の中身を変えてまずアルバムの中の1曲としてリリース。80年代にしては珍しかった長めのタイトルにインパクトもあったが、これまの失恋ソングとは毛色の違う哀愁を帯びたムードにあのハスキーボイスはピッタリ。冬場を迎え、カップヌードルの需要が増え、それに伴いCMの露出も増えると、レコード売り上げ、有線放送のリクエストも軒並み上昇した。

 良くも悪くも大沢誉志幸といえばこの曲。本人はそのイメージを払拭するため、その後のステージではほとんど歌わなかったという。それでもカップヌードルを食べるたびに、この曲を思い出す40代、50代の人は決して少なくない。

 

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