NHK版「犬神家の一族」松子・大竹しのぶの凄さ「鋭い人」演出も窮した質問 ネット絶賛“怪演”の舞台裏

[ 2023年5月2日 11:00 ]

特集ドラマ「犬神家の一族」前編。一人息子・佐清への遺産相続を目論む犬神松子(大竹しのぶ)(C)NHK
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 俳優の吉岡秀隆(52)が主演を務めたNHK版金田一耕助シリーズの最新第4弾「犬神家の一族」は4月29日(後9・00~10・30、BSプレミアム・BS4K同時)、後編が放送され、完結した。犬神家の長女・松子役を演じた女優・大竹しのぶ(65)が圧倒的な存在感を示し、その怪演ぶりに視聴者から絶賛の声が続出。話題を集めた。第1弾から演出を務める吉田照幸監督(53)に大竹の魅力を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 推理作家・横溝正史によるミステリーの金字塔を前後編各90分のボリュームでドラマ化。「獄門島」(2016年)「悪魔が来りて笛を吹く」(18年)「八つ墓村」(19年)に続き、4年ぶりとなる待望作。吉岡は前々作・前作に続き、3回目の名探偵役。湖畔の屋敷を舞台に、金田一が犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛の莫大な遺産をめぐる謎の連続殺人事件に挑む。

 脚本はNHK「岸辺露伴は動かない」シリーズ、アニメ「進撃の巨人」「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズなどで知られる小林靖子氏。吉田監督はチーフ演出を務めた昨年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の後、初作品となった。

 犬神家の次女・竹子役に南果歩、三女・梅子役に堀内敬子、松子の一人息子・佐清役に金子大地、佐清を慕う野々宮珠世役に古川琴音らと豪華キャストが集結した。

 市川崑監督&石坂浩二主演による1976年版の映画で松子役を演じたのが「歌う映画スター」として戦前から活躍した女優・高峰三枝子。吉田監督は「松子は物語の核ですよね。今、高峰さんに比肩する人と言ったら、もう大竹さんしかいないんじゃないでしょうか」。大竹は「鎌倉殿の13人」にも歩き巫女役で出演したが、その前に今作のオファーを出したほどだった。

 大竹の魅力を「台詞がなくても、心の奥底から感情がグワッと出るような、ある種の獰猛さ」と表現。「芝居が毎テイク違います。編集のつながりが頭をよぎることもありましたが、今回の『犬神家』にはライブ感が必要だと思っていたので、逆に楽しみました」と起用理由を明かした。

 「とにかく鋭い人。これまで現場であまり答えに窮することはなかったんですけど、今回は大竹さんの質問に3回ぐらい答えられず、無言になってしまいました」

 例えば、松子が佐清の体を拭くシーンで「突然、『この人はいつもお風呂に入っていないの?』と質問されました。原作があるミステリーなので、こちらはそういうものだと思い込んでるんです。そこをズバッと突いてくる。しかもカメラテストの前に(笑)。おそらく大竹さんは役に入った瞬間、松子になり、そこには暮らしがあり、前後があり、その状況や感情の流れから湧き出る自然な気持ちを基に芝居をされてるから、そのタイミングなのだと感じました」と述懐。

 「今回の台本は、謎解き以上に松子の心に焦点を当てています。1シーンでの心の揺れる幅や種類の多さは、普通のドラマの比ではありません。松子が大竹さんでなかったら、絶対に今回の犬神家の一族は成り立たなかったでしょう。しかも大竹さん、色々な人に声を掛けてくれて現場を盛り上げてもくれるんです。本当に勉強になりました。キャスティングできて、幸せでした」と感謝した。

 前編は4月22日に放送され、BSながら、オンエア終了後(午後11時)に「#犬神家の一族」がツイッターの国内トレンド1位に輝く大反響。後編もオンエア終了後(午後11時)に「#犬神家の一族」が1位、「スケキヨ」が19位、「小林靖子」が25位、「金田一さん」が26位、「青沼静馬」が30位、「大竹しのぶ」が40位、「松子夫人」が49位と国内トレンドを席巻。大竹を称える声が相次いだ。

 「松子夫人に大竹しのぶ、と聞いて『本気キャストやな!』と思ったものですが、やはり大竹しのぶは凄かった。手形の夜のあの静かな感情の揺れよ」

 「何度も焼き直しされてきたこの作品に、まさか大幅変更せず新しい解釈でお出しされるとは。これ、松子夫人を演じる大竹しのぶさんの演技がないと成り立たなかったと思う」

 「大竹しのぶのミリ単位の演技が凄い、脚本が凄い、演出が凄い。原作既読勢も固唾を飲んでラストシーンを見ました」

 「大竹しのぶさん、凄かったな。当て書きと錯覚する松子だった」

 「素晴らしかった。原作を読み、映画や過去のドラマを見てきたけど『母の愛』を痛感したのは初めてです。大竹しのぶさんの演技力は震えます。このドラマに携わったすべての方々を心の底から称賛します」

 シリーズ第5弾の構想を尋ねると、吉田監督は「やっぱり金田一耕助が生まれた『本陣殺人事件』は“金田一ビギニング”として映像化してみたいなとは思います」。ここまで4作品を重ねた後の「本陣殺人事件」は“エピソード0”的な位置づけになりそうだが「まさにそうですね。金田一の原点としてチャレンジしてみたいなとは思います」と語った。

 「本陣殺人事件」は1946年、雑誌「宝石」に連載された長編小説で、金田一が初登場した作品。密室トリックが描かれ、48年に第1回探偵作家クラブ賞を受賞した。今回の「犬神家の一族」前編でも、金田一を追い返そうとした部下を、磯川署長(小市慢太郎)が「失礼なのはおまえたちだ!この方は、かの本陣殺人事件をはじめ、数々の難事件を解決した名探偵、金田一耕助さんである!」と叱った中に登場。実現を心待ちにしたい。

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