藤井七段、羽生九段連破で暫定単独首位!!17歳5カ月最年少挑戦へ前進 王将戦挑戦者決定L

[ 2019年10月22日 05:30 ]

勝利した藤井七段(左)と羽生九段は、感想戦を終え礼をする(撮影・西海健太郎)
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 将棋の第69期大阪王将杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは21日、東京都渋谷区の将棋会館で2局を行い、藤井聡太七段(17)が82手で羽生善治九段(49)を下し3勝1敗とした。この結果全勝棋士が消え、藤井が暫定ながら単独トップに浮上。史上最年少となる17歳5カ月でのタイトル挑戦へ力強く前進した。

 最後は永世7冠の激しい抵抗に遭った。しかしそれは最年少棋士にとって織り込み済み。82手目、[後]5八成桂と渋く引き、相手の受けを無力化させた。5分の重い時間が流れて羽生が頭を下げる。藤井が大きな一勝を手にしたきらめく瞬間だ。

 小さな声で勝利を語る。「1五金が攻めに使えたので、寄せの形になったかと思いました」。29分間を投入して放った50手目の[後]1五金がジワジワと効いた。この時点では飛車の侵略を防ぐための凡庸な一手に見えた。実情は違った。中央にいた羽生の王が退却していく右半分に仕掛けた待ち伏せの意味もあった。羽生がそれに気づいた時は遅かった。「成算があったわけではないんですが」。現在無冠とはいえ、将棋界の第一人者をも惑わせる深い鬼手。17歳の怪物は予想を超えた進化を遂げていた。

 昨年2月、国内に大旋風を巻き起こした朝日杯での初対決初勝利は、いわゆる早指し戦。短時間で手を繰り出す必要があり、ひたすら瞬発力が問われるレギュレーションだが、今回は互いに4時間を持ち合う長時間の対局だ。陸上競技ならば200メートル走に対しハーフマラソンほどの違いがある。1手ごとに深層をえぐる読みを求められるタフな戦いを制しながらも、羽生について「長い時間でも読みにない手を指された。自分もこれからそれを学んでいきたい」と謙虚なコメントを残すのはデビュー以来全く変わらない。

 これで3勝目一番乗り。藤井以外の6棋士全てが順位戦A級所属という環境で目の覚めるような快進撃だ。まるでティア1(強豪国)のチームを次々と打ち破ったラグビー日本代表のように。

 「これまで3勝1敗はいいペース。全力を尽くして(7番勝負の)挑戦を目指したいと思います」

 残る2局への手応えを、本人は確実につかんでいる。

 《羽生、作戦狂った初黒星》最終盤の羽生は「考える人」のポーズで固まっていた。終局近くは盤面ではなく自らの膝を力なく見つめるばかり。「1五金が想像以上に結構厳しかった。端にいても存在感があり、まずい将棋になりました」と自省の弁だ。

 抽選であらかじめ先手番が決まっており、藤井の得意な角換わりではなく飛車先の歩を突き合う相掛かり戦法を選択。「予定の作戦。ですが途中から力戦模様となって難しい将棋になってしまった」。昼食休憩の2手前に打たれた[後]2二歩も「嫌な形でした」という。早い段階で構想に齟齬(そご)が生じていた。

 「大きな一番」としていた藤井戦での今リーグ初黒星。全勝棋士がいなくなるカオス状態を招いてしまったものの、2勝1敗は決して悪い前半戦ではない。「まだリーグは続く。残りも全力を尽くしたい」。感想戦での目力にはただならぬものがあった。

 《勝負メシで「新手」》この日の昼食も対局会場の将棋会館に特別協賛の大阪王将(イートアンド)がキッチンカーを派遣して提供した。羽生は「覚醒のネギあんかけ炒飯(チャーハン)」、藤井は「もちもち太麺の炒め焼きそば+ギョーザ」をそれぞれ注文。藤井は一貫してあんかけ炒飯系を選んでいたが、ついに麺類の「新手」を披露した。

 ▼王将戦の挑戦者決定リーグ 例年9~11月に実施。シードされた前期リーグ上位4人(順位1~4位)と、予選を勝ち上がった3人(同5位)で争う。リーグ戦で同率首位が複数出た場合は原則として順位上位2人による1局だけのプレーオフが行われ、挑戦者を決める。 

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