名脇役・織本順吉さん死去 92歳「“立派な老衰”」

[ 2019年3月26日 05:30 ]

テレビ朝日のドラマ「やすらぎの郷」には90歳で出演した織本順吉さん
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 映画「仁義なき戦い」シリーズやテレビ朝日ドラマ「やすらぎの郷」など約2000作品に出演した俳優の織本順吉(おりもと・じゅんきち、本名中村正昭=なかむら・まさあき)さんが18日午後0時2分、老衰のため栃木県那須塩原市の病院で死去した。92歳。神奈川県出身。葬儀・告別式は近親者で行った。やくざや政治家など幅広い役柄を演じて作品に深みを与えた名脇役だった。

織本さんは持病はなかったが、晩年は足が弱り、那須塩原市の自宅で立てない状態だった。所属事務所や長女で放送作家の中村結美さんによると、年明けに同市内の病院へ入院。徐々に体の機能が衰えていったという。

 生前から「役者は出番が終わったら、静かに去っていくべきだ」と話しており、延命治療は受けなかった。最期は結美さんら家族に見守られ息を引き取った。結美さんは「お医者さまからも“立派な老衰です”とお墨付きをいただいた最期でした」と明かした。

 新協劇団を経て、劇団青俳の結成に参加。映画「仁義なき戦い 完結篇」(74年)、NHK連続テレビ小説「わかば」(04年)など重厚で生活感あふれる演技で大作や話題作に欠かせない存在だった。出演作品数は約2000本に上った。

 称賛を浴びたのが「やすらぎの郷」での演技。90歳での出演に不安視する声もあったが脚本家の倉本聰氏(84)から「老いを得て咲く花がある。そこにいるだけでいいのです」と言葉を掛けられた。役どころは、舞台となる老人ホームの創設者で芸能界のドンと呼ばれた重鎮。出番は少なかったが臨終シーンは視聴者に強烈な印象を残した。

 私生活では那須塩原への移住を機に、還暦を過ぎてから運転免許を取得。70代からパソコンを習い始めるなど年を重ねても挑戦心が衰えることはなかった。

 最後のテレビ作品は今月3日にNHK―BS1で放送された自身のドキュメンタリー「老いてなお花となる 第二章~俳優・織本順吉92歳~」。カメラで追い続けた結美さんによると、この放送を病室で見て「俺は幸せな役者。感動して眠くなんかならない」と感想を述べていた。「現役役者」を貫いたまま旅立った。

 ◆織本 順吉(おりもと・じゅんきち)1927年(昭2)2月9日生まれ。神奈川県出身。神奈川県立工業学校(現神奈川工業高校)を卒業後、東芝の工場に就職。退社後に舞台俳優として活動し、映画「美わしき歳月」(55年)でデビュー。映画「未完の対局」(82年)、ドラマ「3年B組金八先生」(99年)、「ROOKIES」(08年)などにも出演。

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2019年3月26日のニュース