記録で振り返るシリーズMVP

[ 2017年10月27日 10:15 ]

日本シリーズ進出を決め筒香嘉智(25)と抱き合うDeNA・ラミレス監督
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 【宮入徹の記録の風景】日本シリーズはあす28日に幕を開ける。ソフトバンクとDeNAの顔合わせはシリーズ史上初。ソフトバンクが勝てば2015年以来2年ぶり8度目、DeNAなら98年以来19年ぶり3度目になる。日本一の行方とともに誰がシリーズMVPを獲得するかも気になるところ。そこで、過去のシリーズMVPについて探ってみた。

 まず、過去の受賞者をポジション別に見てみよう。投手23、捕手5、内野手21、外野手19。僅差ながら投手が一番多い。第1回の50年から4勝先勝の試合方式が定着しているが、上限の4勝を記録したのが58年西鉄の稲尾和久と59年南海の杉浦忠の2人。稲尾は巨人相手にチーム3連敗から4連勝、対照的に杉浦は初戦から無傷の4連勝と同じく巨人を圧倒し、ともにMVPに輝いた。近年は投手のローテーション制が確立しており、MVP投手の勝利は87年西武の工藤公康から9人続けて2勝止まり。3勝してMVPは64年南海のスタンカを最後に生まれていない。

 投手のMVP獲得者のレギュラーシーズンでの働きを見ると、出場年に規定投球回に達した投手は91・3%に当たる21人。規定投球回未満は04年西武の石井貴、13年楽天の美馬と2人しかいない。エース級としてフル回転した先発投手がシリーズでも結果を残し受賞するケースが目立つ。もっとも、73年巨人の堀内恒夫の場合はレギュラーシーズンで規定投球回に達したものの、12勝17敗と負け越し。防御率は4・52と悪くリーグ最下位に沈んだ。ところが、日本シリーズでは2勝0敗、防御率1・13と見違えるような投球。完投勝利を挙げた第3戦では2本塁打を放ち、投打二刀流でV9達成の立役者となった。

 捕手も含めた野手の場合は45人中38人が規定打席以上で全体の84・4%。うち同年打撃3冠部門のタイトルホルダーは9人で12度。史上最多の4度MVPに輝いた巨人の長嶋茂雄は63年が首位打者、打点王、69、70年が打点王と開幕からポストシーズン終了まで中軸としての重責を果たした。一方、僚友の王貞治はシリーズに14度出場。歴代最多の77試合、同29本塁打、歴代2位の63打点を記録しながらMVPとは無縁に終わった。規定打席不足のMVP7人のうち、61年宮本敏雄、67年森昌彦、68年高田繁、71年末次民夫と4人までが巨人勢。王が1度も取れなかった分、脇役の活躍が9連覇を含め、川上・巨人負けなしの11度のシリーズ制覇をもたらしたと言えるだろう。

 規定打席不足でMVPと言えば、最近では11年ソフトバンクの小久保裕紀の名が挙げられる。同年レギュラーシーズンは98試合の出場に止まり、打率・269、10本塁打、48打点と精彩を欠いた。ところが中日とのシリーズでは1勝2敗の劣勢で迎えた第4戦で1回に先制打、続く第5戦も1回に先制打を放ち2試合連続で勝利打点をマーク。チーム8年ぶりの日本一に貢献した。この時、小久保は40歳1カ月。67年の歴史を持つ日本シリーズで40歳を超えてMVPに輝いたのは小久保だけだ。

 今回の日本シリーズではソフトバンクから本塁打王、打点王の2冠を獲得したデスパイネ、DeNAからは首位打者の宮崎が出場する。昨年MVPの日本ハムのレアードは今季のデスパイネと同じ、本塁打王と打点王の2冠。デスパイネがレアードの再現を狙う。また、首位打者のシリーズMVPは98年横浜の鈴木尚典が最後。宮崎が受賞すればチームの先輩以来19年ぶりとなる。今回もタイトルホルダーがキーマンとなるかもしれない。(敬称略、専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、第1回から27回連続で資料役として出席。

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