「記者・松坂」の葛藤 「伝え切れたかな?」選手目線?ファン目線?メディア目線?

[ 2022年12月27日 05:30 ]

松坂氏の自宅のある米ボストンは年末も寒さが続いている(撮影・松坂大輔)

 【平成の怪物が行く 松坂大輔の探球】本紙評論家の松坂大輔氏(42)による月1回の連載コラム「松坂大輔の探球」。昨年限りで現役を引退し、評論家1年目だった22年の最後となる第8回は日米両国の野球、夏の甲子園大会、ゴルフなど多岐にわたった取材活動を自宅のあるボストンで振り返った。またメッツ入団が決まった千賀滉大投手(29)についても分析。活躍に太鼓判を押した。

 吉田正尚選手がレッドソックス、千賀滉大選手がメッツへの入団が決まりました。同じ米東海岸。自分の自宅があるボストンのレ軍はもちろん、メ軍の本拠地ニューヨークへも車で行けます。来年は取材でもプライベートでも試合を見る機会が増えるのでは、と思っています。

 自分も13~14年にメ軍に所属しましたが、実はユニホームが好きなんです。千賀投手の入団会見を「うらやましいな」と見ていました。米メディアに「Ghost(お化け)」と称されたフォーク。あそこまで落差があるボールを投げる投手はメジャーにもいません。初見ではかなりの確率で凡打になるか、空振りでしょう。同じくフォークが武器だった野茂英雄さんや佐々木主浩さんと同様に、攻略は難しいと思います。大切なのはフォークを生かすための他の球種。春季キャンプやシーズン序盤で有効なボールは何かを見極めるのも鍵でしょう。

 現役を引退して迎えた1年。「取材者」という立場でさまざまな現場に足を運ばせていただきました。それぞれが思い出深く、初めてのことばかりで全てが新鮮で刺激的な1年でした。一方で難しさも感じました。スポニチや自分がキャスターを務める「報道ステーション」は、オンエアの時間や紙面の行数に限りがあります。その中でいかにポイントを絞ってファンの皆さんに伝えるか。「これも言いたかった…」「伝え切れたかな?」という思いは常にありました。

 また、自分は選手出身。大谷翔平選手らに実際に質問する機会がありましたが、取材の際に「自分が選手だったら…」という立場で考えてしまう一方、メディア側がしたい質問、欲しい答えもあります。その感覚をつかむのが本当に難しい。それらも含め、自分なりの取材方法を構築していけたらと思います。

 来年はまず、3月のWBCに向けた取材が中心になると思います。あとは野球以外の現場にもどんどん足を運びたいですね。世界にはさまざまな競技があります。自分が取材に行くことでスポットを浴びる選手がいるかもしれない。その競技が発展するきっかけを少しでもつくれたら、という目標を持っています。 (本紙評論家)

 ○…松坂氏が撮影した「雪の降るボストン」は、自身のツイッターでも「吉田正尚選手、正式契約をする際にボストンに来られる場合、寒いのでダウンジャケットは必須です」とレッドソックス入団が決まった吉田へのアドバイスとともに画像をアップした。現在、米国は記録的な寒波に襲われ、ボストンなども寒さが続いている。

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2022年12月27日のニュース