広島・佐々岡監督 コロナに阻まれた一体感 それでも最後は温かく見送られ「涙をこらえるのに必死だった」

[ 2022年10月4日 04:45 ]

退任する広島・佐々岡監督は、会見の席で改めて思いを語る(撮影・椎名 航)
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 今季限りで退任表明していた広島・佐々岡真司監督(55)が3日、広島市南区の球団事務所で記者会見を開いた。前日2日の今季最終戦後、ファンの前で3年連続V逸の結果責任を負う意思を示し、謝罪と感謝を伝えた一夜明け。会見では悔しさを改めてにじませつつ「大好きな球団で野球ができ、監督までさせてもらった。幸せな男でした」と、しみじみと語った。

 シーズンの激闘から解放されたからか、佐々岡監督は柔和な表情で席に着いた。球団事務所で午前11時から開かれた退任会見。報道陣に「お世話になりました」と感謝する姿に人柄がにじみ出る。発する言葉の端々には、しかし、陳謝の念と無念さが入り交じった。

 「一体感という言葉を掲げて就任しましたが、僕の力ではできなかった。戦力がありながらチームを勝たせてあげられなかった」

 就任1年目の20年が5位、昨季は4位と推移し、結果を出せなければ責任を取る…と覚悟を決めて臨んだ3年目。し烈な3位争いの渦中にありながら、ヤクルトの2連覇が決まった翌9月26日、球団にケジメをつける意向を伝え、了承された。

 新型コロナ禍での戦いだった。1年目の春季キャンプで流行し、延期となった6月19日の開幕は無観客。2、3年目はチーム内でも主力選手らの感染離脱が相次ぎ、編成に難しいかじ取りを迫られた。指揮官が得意とする手法にも影響があった。

 「食事などでコミュニケーションを取ることができなかった。ただ、これは他球団も同じ。そういう状況下でもチームをまとめないといけなかった」

 印象深い試合には20年6月19日の開幕DeNA戦(横浜)を挙げた。開幕投手を務めた大瀬良が投打に活躍。1点を負う5回に同点打、2―1の9回にはプロ1号2ランを放つ一方、投げても完投勝利を挙げて、佐々岡監督に初星を贈った。

 「大瀬良大地をエースとして開幕投手に指名した。監督での1勝目は忘れられない」

 グラウンドで初めて涙を流したという前日2日、今季最終戦後のセレモニー。退任あいさつを終え、「ウルッときたので監督室に隠れた」指揮官を、ナインが呼び出して記念撮影するサプライズがあった。大瀬良が付き添い、菊池涼に肩を叩かれる。象徴的だった。

 「すごくうれしかった。ファンの方にも、こういう成績で去る人間をありがたく見送ってもらった。涙をこらえるのに必死だった」

 無念さを抱き道半ばで去る「88番」を包み込んだグラウンド内外の温かな空気。それこそが佐々岡監督の人柄を如実に表していた。(江尾 卓也)

 ◇佐々岡 真司(ささおか・しんじ)1967年(昭42)8月26日生まれ、島根県出身の55歳。浜田商からNTT中国を経て、89年ドラフト1位で広島入団。1年目から主戦として活躍し、2年目の91年に17勝を挙げMVP、沢村賞などを獲得。07年に現役引退。通算成績は570試合で138勝153敗106セーブ、防御率3・58。15年から広島の2軍投手コーチを務め、19年から1軍担当。翌20年に監督に就任した。1メートル85、90キロ。右投げ右打ち。

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