「世界の王」と「村神様」の共通項は“畳” 足の指で地面つかむ感覚養い3冠王へと「畳み」かけた

[ 2022年10月4日 05:30 ]

ヤクルト・村上 日本選手最多56号&史上最年少三冠王

今春キャンプ、畳の上でトス打撃を行う村上

 「世界の王」と「村神様」――。2人が重なるのは、希代の左打ちのスラッガーというだけではない。伝統的な床材である、畳を使った素振りだった。

 新型コロナに感染した影響で約3週間遅れで1軍に合流した今春の沖縄・浦添キャンプ。村上が合流直後、杉村打撃コーチに「取り寄せてもらえませんか」と頼んだのは「畳マット」だった。歴代最多の868本塁打を放った王貞治が若手時代、すり切れるほど畳の上で素振りを繰り返して鍛えたと、数年前に杉村コーチから聞いていたからだ。王は真剣を手にわらも切った。

 キャンプ地に届いたのは、岡山のい草メーカー「大島屋」が製造する、その名も「Home run(ホームラン)―畳」。スポーツ専用に開発された一畳ほどの大きさの畳マットで、足趾(そくし)力(足指の握力)の向上によるスイング力のアップに効果があるという。村上はこの上にスパイクを脱いでソックス姿で立ち、素振り、ティー打撃、マシン打撃などに励んだ。

 「内転筋が鍛えられて足の力を使う。いい練習です」。目を輝かせ、効果を口にした。足元が滑りやすい状況で体幹とバランス感覚を鍛えるとともに、足の指で地面をつかむ感覚を養った。人並み外れた下半身の強さと究極のバランスを求められる一本足打法を完成させた王のように。昭和から令和と時代を超えて、伝説のトレーニングが受け継がれた。

 「試行錯誤して、自分の打撃と向き合って取り組んできた。自分としっかり向き合えたことが大きい」。今季の本塁打量産について、村上はこう言った。畳を使った練習も自らの打撃と向き合い、成長するために行った。22歳は運命に導かれるように王に追いつき、王を超えた。

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