【スポニチスカウト部(33)】東京ガス・臼井 社会人No.1右腕が歩むロッテ・美馬の道

[ 2022年10月4日 06:00 ]

昨年の都市対抗で橋戸賞を獲得した臼井
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 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第33回は東京ガスの最速154キロ右腕・臼井浩(いさむ)投手(28)。昨年の都市対抗優勝に導き、MVPにあたる橋戸賞を獲得した「社会人No・1投手」は、プロ志望を表明した。

 物語は何げない日常から始まった。中央学院大時代、たまたまテレビで楽天のキャンプ中継を視聴していた臼井。そこには身長1メートル69ながら力強い直球を投げ込む美馬(現ロッテ)の姿があった。「自分と同じ体形でもプロで活躍している」と衝撃を受けた。経歴を調べると社会人野球の東京ガスからプロ入りと判明し、同じ道を歩むと即決した。この決断が臼井、そして東京ガスの運命を大きく変えることになった。

 昨年の都市対抗で東京ガスは悲願の初優勝。大黒柱は臼井だ。4試合に登板し、1勝2セーブで防御率は1・23とフル回転。MVPにあたる橋戸賞に輝いた。東京ドームで自己最速の154キロを計測した直球、6種類の変化球全てが決め球になる圧倒的投球。既に同年のドラフトは終了していたが、スカウト陣は目の色を変えた。

 28歳になった今年。東京ガスの練習場に訪れたあるスカウトが、山口太輔監督に「臼井はプロにチャレンジしたい気持ちはあるのか」と尋ねた。20年に日本生命の阿部翔太投手が臼井と同じ28歳でオリックスにドラフト6位指名された実績があるが、高齢選手のプロ入りの可能性はわずか。指揮官は臼井と面談の場を設け「若い時より今の自分に自信がある。挑戦したい」とプロ志望を確認した。

 大学時代の最速は145キロ。大器晩成の理由も美馬だった。オフの期間、東京ガスのグラウンドで自主トレを行う憧れのOB。臼井の東京ガス3年目、練習を行う美馬の投球フォームを凝視し「軸足の右足で蹴る」ことの重要性に気づいた。リリースの直前まで「蹴ること」を我慢し、最後に下半身からの爆発的な勢いを上半身に伝える。頭と体で完全に理解したのは5年目。そこから快進撃が始まり、ついに「社会人No・1投手」の名を手に入れた。

 「プロに行けるのであれば行きたい。後悔はしたくない」と社会人野球の栄光をつかんだ男は言う。ドラフト会議は20日。「超即戦力」を獲得する球団は現れるだろうか。 (柳内 遼平)

 《妻子の存在が最大の活力に》臼井は19年に4学年上の恵さんと結婚し、翌年には悠悟君が誕生。妻子の存在が最大のモチベーションだ。17年の入社以来、関東を代表する強豪チームへの貢献を続けてきたが夫人には「プロに行けるチャンスがあるならば行きたい」と本音を漏らしていた。まだ物心がついていない息子には「できるなら野球をしている父親の姿を記憶できるようになるまで投げ続けたい」との思いも抱いている。

 ☆球歴 杉久保小1年から海老名イーグルスで野球を始め、大谷中では神奈川綾瀬シニアに所属。光明学園相模原(神奈川)では甲子園出場なし。中央学院大を経て、東京ガスでは18年に侍ジャパン社会人代表に選出。

 ☆球種 直球、スライダー、カットボール、カーブ、フォーク、チェンジアップ、ツーシーム。

 ☆トレードマークの度付きサングラス 昨年から使用し「より一層感情を出さないように」とポーカーフェースを貫く。

 ☆評価 山口監督は「栗林(トヨタ自動車→広島)に匹敵する能力を持っている」と太鼓判を押した。

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