“成長株”明星大・松井 今春からエースの“則本2世”

[ 2022年10月4日 06:30 ]

明星大・松井颯(提供写真)
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 【菊地選手ドラフト「隠し玉」発掘】今年のドラフトは、この選手にも注目――。「10・20」運命の日を待つのは、上位指名候補選手ばかりではない。中央球界では無名ながら、その素質と将来性でNPB入りを狙うことができる「金の卵」が全国には多く存在する。フリーライターの菊地選手(40)が全国を駆け回り“発掘”した「隠し玉」を紹介する。

 ドラフト候補を評価する際、どうしても実績がものをいうのは否めない。だが、投げているボールだけを純粋に評価すれば、この投手は今年のドラフト候補で5本の指に入るのではないか。実績のあるドラフト上位候補と見比べても、遜色ないどころか上回っているのではないかと思えるほどだ。

 大学4年間を首都大学2部リーグで過ごし、9月30日時点で通算6勝1敗と華々しい実績とも無縁。だが、スリークオーターの角度から放たれる最速154キロの快速球は、ホームベース上でも勢いを失わない強烈な球威がある。左打者のインコースに食い込む力強いストレートは、木製バットをボキボキとへし折って対戦相手の野球部の予算を圧迫する。スライダー、チェンジアップなどの変化球の精度も高く、コントロールもいい。その投げっぷりは、則本昂大(楽天)の姿が重なる。ドラフト戦線で騒がれていないのが不思議なくらい、もっと評価されていい投手なのだ。

 名門・花咲徳栄では2年秋にBチーム落ちを味わった非エリート。エースで4番打者だった野村佑希(現日本ハム)の陰に隠れ、最後の夏は4番手格の控え投手。高校卒業時には野球をやめることも考えたという。大学進学後にウエートトレーニングに励み、体重が12キロ増えたところボールが激変。エースになったのは今春からと歴史は浅いが、急激な上昇カーブを描いてドラフトシーズンを迎えている。

 大学4年の春前に「取材を受けるのは人生初です」と本人が明かしたインタビューをさせてもらった。「凡人でも努力すればプロに行けることを証明したい。“Bチームの星”になりたいです」と語ったあどけない笑顔が忘れられない。いつか松井颯の名前を知っていたことを自慢できる日が、きっと来るに違いない。

 ◇松井 颯(まつい・はやて)2000年(平12)9月14日生まれ、東京都清瀬市出身の22歳。小2から野塩ファイターズで野球を始める。清瀬四中では清瀬ポニーズに所属。花咲徳栄では3年春からベンチ入りし、同年夏は背番号15で甲子園に出場。50メートル走6秒1、遠投120メートル。1メートル78、83キロ。右投げ右打ち。

 ◇菊地選手(きくちせんしゅ)1982年(昭57)生まれ。本名・菊地高弘。雑誌「野球小僧」「野球太郎」の編集部員を経て、15年4月からフリーライターに。ドラフト候補の取材をメインに活動し、ツイッター上で「大谷翔平」とツイートした最初の人物(10年10月8日)。野球部員の生態を分析する「野球部研究家」としても活動しつつ、さまざまな媒体で選手視点からの記事を寄稿している。著書にあるある本の元祖「野球部あるある」(集英社)などがある。ツイッターアカウント:@kikuchiplayer

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