【内田雅也の追球】素晴らしい人生を保証してくれるのは、才能ではなく習慣

[ 2022年2月23日 08:00 ]

日の出前の沖縄・恩納村のタイガービーチ(22日午前6時49分撮影)
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 沖縄の夜明けは遅い。キャンプイン当初は午前7時を回ってようやく明けてきていた。阪神一行が宿泊している恩納村の、この日の日の出は6時58分だった。

 阪神のキャンプ休日。いつもの宜野座村ではなく、夜明け前の恩納村を歩いた。道中で同じくウオーキング中だったフロントマンと行き交った。

 冨着ビーチに出た。通称「タイガービーチ」。まるで阪神の砂浜のようだ。夜明け前の東シナ海は静かだった。上空は厚い雲に覆われていたが、波はおだやかだった。

 日の出は遅いが、選手たちの朝は早い。

 いま宿泊しているペンションの元オーナー(現オーナーの父)は昔、毎朝5時に汗だくになって走る選手を見ていた。気になって顔を確かめると平野恵一(現台湾プロ野球・中信兄弟打撃・内野総括コーチ)だった。

 現2軍監督の平田勝男が1軍コーチのころ、早朝の食堂をのぞくと、目玉焼きが2個、皿に乗っていた。スタッフに「これ何?」と聞くと、毎朝5時からトレーニングしている鳥谷敬の食事だという。毎朝5時と驚き、感心した。

 現役選手では西勇輝も「早寝早起き」だ。一昨年2月、亀山努(本紙評論家)との対談で語っていた。「9時に寝て5時に起きるサイクルを継続していきたい。それができなくなった時、引退が近づく。生活面も隙がないようになりたい」

 そう、習慣なのだ。沖縄の、まだほの暗い早朝から、選手たちは努力を続けているわけだ。

 「素晴らしい人生を保証してくれるのは、才能ではなく習慣だ」。喜多川泰の小説『書斎の鍵』(現代書林)で、主人公の青年が父親から幾度も聞かされてきた言葉だ。「習慣によってつくり出すべきものは思考だ。心と言ってもいい。行動は心に左右される以上、この“心の習慣”をよくしない限り、よりよい人生になることはない」

 生活習慣から生活態度が生みだされる。新明解国語辞典(三省堂)の「生活態度」にこうある。<生きる目標をどこに置くか、毎日の生活のリズムをどのように設定するか、他人・社会とのかかわりはどうあるべきか、自分をどうやって磨き高め豊かにしていくか、などの基本的問題について考えた上で(何も考えないまま)過ごす毎日の生活のしかた>。

 何とも深い意味ではないか。いまは「生活態度」をつくるための日々なのだろう。 =敬称略=
 (編集委員)

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2022年2月23日のニュース