【内田雅也の追球】知らぬ間の守備向上――12球団最少1失策の阪神

[ 2020年6月13日 08:00 ]

練習試合   阪神3―3オリックス ( 2020年6月12日    京セラD )

<練習試合 オ・神>4回、若月の一塁ゴロをさばくボーア(撮影・北條 貴史)
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 試合前練習で内野ノックを受けた阪神ジャスティン・ボーアは1本目の緩いゴロをこぼした。帽子を取り一礼する。来日後、日本人選手のしぐさを見て、まねているのだろう。ちゃめっ気たっぷりに笑っていた。

 そのボーアが試合では好守を連発した。1―1同点の2回裏2死二、三塁のピンチ。後藤駿太の一、二塁間ゴロをバックハンドで好捕。抜けていれば2点打の当たり。当初から一、二塁間寄りに守り、安打を未然に防いだ点も評価したい。

 4回裏には若月健矢の今度は一塁線ゴロに体勢を崩しながら好捕、一塁ベースカバーの西勇輝にバックハンドトスで好送球。再び安打を防いだ。

 まだある。5回裏の三ゴロはジェフリー・マルテの送球がややそれたが、体を目いっぱい伸ばしてアウトにした。

 打撃を期待して獲得した新外国人だが、一塁守備も無難にこなしている。大きな不安はないと言ってもいいだろう。

 阪神はこのところ、地味ながら安定した守備力を見せている。この夜も無失策だった。調べてみると、今月2日に再開された練習試合で失策はわずか1個しかない。12球団最少である。

 公式記録はないので、あくまで参考記録だが、多い順に並べるとロッテ13、中日10、DeNA8、オリックス7、広島・日本ハム・西武6、楽天・ソフトバンク4、巨人3、ヤクルト2、そして阪神1となる。

 阪神のその1個も9日広島戦での能見篤史悪送球で、野手はゼロだ。

 しかも、この夜は京セラドームだったが、前8試合は人工芝に比べ打球処理が難しい土の甲子園球場、天然芝のマツダスタジアムだった。

 「ええ、知っていました」と、試合前に顔があった内野守備走塁コーチ・久慈照嘉は言った。「内心ホッとしていますよ。でもね。まだ練習試合。これが本番になってどうなるのか。まだまだ安心できません」担当コーチというのはそういうものだろう。
 ただ、野球では打撃は好不調の波があるが、守備にスランプはないと言う。ならば、この守備力は本物だろうか?

 昨年の失策数は106個、一昨年は89個で2年連続セ・リーグ最多だった。もちろん、守備力は失策数だけで計れるものではないが、一つの目安にはなるだろう。

 キャンプ、オープン戦の後、長い自粛期間があった。守備面の成長などはなかなか目に見えないものだ。知らぬ間に課題の守備力が向上していたのかもしれない。

 阪神でも監督を務めた野村克也はよく「失敗と書いて、せいちょう(成長)と読む」と言った。近年目立った多くの失敗を経験して、成長してきたのであれば喜ばしい。いかにも野球らしい成長である。=敬称略=(編集委員)

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