“吉田正尚、ヒット打った?”誕生の舞台裏

[ 2019年10月4日 09:00 ]

熊代は金髪で登場し、森の物まねを披露(撮影・尾崎有希)
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 男は悩んでいた。場所は楽天生命パーク。西武がマジック3で迎えた、9月22日の楽天戦前の練習中だった。「どうしましょう。秋山さん待ちですね…」。フリー打撃を終えてロッカールームの扉の前で立ち止まると、重圧にじむ苦悩の表情で沈黙した。

 2日後、9月24日深夜の千葉・幕張。男は晴れやかな表情でステージに立った。金髪のウイッグをかぶりインパクトあるひと言。「吉田正尚、ヒット打った?」。パ・リーグ連覇の西武祝勝会で、森友哉に扮した熊代が発して話題となったフレーズだ。

 昨年、札幌で行われたリーグ優勝祝勝会。熊代は、数日前に劇的は逆転弾を放ち右手の人差し指を掲げた秋山のモノマネをして笑いを誘った。秋山メイクを施したのは巨人に移籍した炭谷。名プロデューサーがいなくなった上に、秋山のモノマネのインパクトは強烈だった。連覇が近づくにつれて、熊代が感じたプレッシャーは計り知れなかった。

 その中で生まれたのが冒頭のやりとり。「秋山待ち」のフレーズに“ネタがないんだな”と感じた記者は、こう言った。「今年の活躍度でいえば森。生やしているあごひげも同じようなイメージだし、金髪のカツラを買って短髪にして、森友哉のマネでもしてみたら?」。熊代は「きょう買い出ししてきます!」と試合後に仙台市内でカツラを探し回った。無事に購入し、仙台から千葉・幕張に持ちこんだ。一方で、同じような話題で他社の記者には「おかわりさんはどう?」と助言を受けた。打点王と首位打者を獲得した2人。昨年の秋山ほど完成度は高くなかったが、熊代自身が生み出した「吉田正尚、ヒット打った?」と「優勝、おかわり!」のフレーズはさすが「訓示王」のパフォーマンスだった。

 さてその熊代、レギュラーシーズンの最終戦で最後の打者になった。9月26日の楽天戦、相手は復活マウンドの由規。空振り三振だったが熊代は「ようやく叶いました」と感慨深げだった。由規は仙台育英のエースで155キロをマーク、熊代は今治西のエース兼4番として、ともに07年の甲子園を沸かせた。甲子園での対戦はなかったが、互い特別な「同級生」だ。

 ともにプロ生活は順風満帆ではない。それでも日々悩み、居場所を見つけるために、できることにコツコツと取り組んでいる。ともに89年生まれ。改元の年だった。(記者コラム・春川英樹) 

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