キドコロ活躍中!ソフトバンク城所 ブレークまでの険しかった道のり

[ 2016年6月15日 12:00 ]

城所の帽子のつばには「七転八起」の文字

 今年は一味違うと承知していたが、2発には驚いた。12日の巨人戦(ヤフオクドーム)で2打席連続アーチを放ったソフトバンクの城所だ。

 故障に泣いた昨季は1軍出場わずか1試合だったが、5月18日の日本ハム戦で9シーズンぶりの本塁打となる代打3ランを放ち、覚醒した。巨人戦で記録した1試合2発はプロ初。マーリンズのイチローが着ていた「キドコロ待機中」のTシャツの方で知られていた男が大ブレーク中だ。

 今季途中までは代走や守備固めが主な役割だったが、球団が入団当初にかけていた期待は大きかった。2003年秋のドラフトで当時ダイエーから2巡目で指名されて入団。岐阜・中京では主力として02年の明治神宮大会で優勝するなど、走攻守3拍子そろった素質が高く評価されていた。

 その03年オフ、ダイエーは当時のフロントの独りよがりな行動で揺れていた。小久保が巨人へ無償トレードされ、村松がフリーエージェント(FA)宣言し、オリックスへ移籍。ドラフト上位は即戦力の選手が予想されていて、城所は4巡目以降と思われていたが、2巡目での指名だった。村松がつけていた背番号23を与えられたことからも期待のほどが分かる。

 ただ、なかなか殻を破れなかった。その妨げになったのは「プレーの軽さ」だったと思う。集中力を欠いたり、軽率、緩慢だったりするプレーを野球界では「軽い」と表現することがあるが、そうした指摘をたまに聞いた。05年8月30日のロッテ戦、代走で1軍初出場したが、打球を足に当てて守備妨害でアウト。ばつの悪そうな表情をよく覚えている。

 外野の守備固めで打球を後逸するプレーなどもあったが、今季の城所は地に足がついている印象を受ける。打撃ではバットを短く持ち、コンパクトに振り抜いている。2軍監督も務めていた秋山前監督から「いやらしい選手になれ」と口酸っぱく言われていたのを思い出す。バットを短く持っても体の強さで打球は遠くへ飛ぶ。巨人戦での右翼席への2連発は、1本目はホームランテラスだったが、2本目はスタンドへの文句なしのあたりだった。

 12日の巨人戦後、現在の自分を「必死中」だと話していた。度重なる故障や屈辱のプレー…。今季は緊急事態に備え、捕手練習にも取り組んだという。遠回りした分、今の頼もしい城所があるのかもしれない。(記者コラム・森 寛一)

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