内川「僕が一番いい思い」“驚異の制球”工藤監督からサク越え15発

[ 2015年2月16日 06:30 ]

打撃投手を務めた工藤監督は内川のライナーをよける

 ソフトバンクの工藤監督が、ついに投げた。紅白戦の余韻が落ち着いた午後3時15分すぎ。特打の準備のためにティー打撃をしようとしていた内川に監督室から声が飛ぶ。「どれぐらいで始められるんだ」。間もなくすると、鮮やかなブルーのグラブを手に背番号81がマウンドへ。打撃投手やコーチの負担軽減のために自ら買って出た。

 今キャンプ最多3万3300人のファンが押し寄せた生目の杜運動公園。スタンドからは大きな拍手が起こった。通算224勝左腕VS7年連続打率3割の安打製造機。夢の対決が幕を開けた。

 13球目、1発目の柵越えが左翼芝生席に飛び込む。往年のフォームからテンポよく投げ込むボールを内川は気持ちよさそうに打ち返した。約15分間で89球。柵越えは15発を数えた。その内容よりも、見逃しはわずか8球。現役を引退して4年、前日に肩をつくり始めたばかりの51歳の指揮官が、驚異のストライク率で投げ込んだ。

 「そんなに振っている力感は見えないんだけど。ボールの軌道に対してバットがポンと素直に出てくる。落合(博満=現中日GM)さんみたいで、空振りを取るのが難しいと感じた」

 打撃投手終了の時間が迫ると現役時代に武器としたカーブをリクエストされた。「ストライク入らないかもしれないぞ」と話した1球目こそワンバウンドしたが、2球目、3球目はストライクコースへ。その球を連続で柵越えされ、さらに技術の高さを確信した。

 2人が公式戦で最後に対戦したのは05年。通算では12打数3安打1本塁打という成績が残っている。今は監督と選手。内川は「うれしかった。ボールの回転が良かったから、軽く投げているように見えて切れがあった。きょうは僕が一番いい思いをしたんじゃない?」と感激しきりだった。

 自ら投げて、実力を肌で知る。内川には3番を任せたい意向の工藤監督だが「あんなにヒットを打てる打者なんだから4番でもいいんだけどね」と笑った。今季、12球団の指揮官で唯一の投手出身者の特権だった。

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