イチロー注文に応えた ジーターから「三塁打頼むで」

[ 2012年8月15日 06:00 ]

レンジャーズに勝利し、ジーター(左)と喜ぶヤンキースのイチロー

ア・リーグ ヤンキース8-2レンジャーズ

(8月13日 ニューヨーク)
 ヤンキースのイチロー外野手(38)は13日(日本時間14日)、レンジャーズ戦でメジャー初の「9番」で先発し、2打数1安打。7回には1番を打つ主将デレク・ジーター内野手(38)のリクエストに応えて右中間へ三塁打し、三塁ベース上で珍しく笑みを浮かべた。3回には今季初の犠打を決め、逆転満塁弾を演出。マリナーズ時代と役割は変わったが、リーグ最高勝率で首位を走る名門球団の欠かせないピースとなっている。

 純粋に野球を楽しんでいる。それが今のイチローだ。4点リードの7回、右中間を破るヤ軍移籍後初の三塁打。悠々と三塁に進んだ背番号31は、ヘルメットに手をやり本塁を向いた瞬間、打席に向かうジーターと目が合った。思わず頬が緩み、そして右手で指をさす。グラウンド上ではあまり感情を表に出さないイチローが、塁上で笑った。

 「僕が三塁へ行ったら、あいつ、ジーターが笑ってきた」

 理由は打席前の主将とのやりとり。先頭打者で打席に向かおうとすると、次打者のジーターが声を掛け、むちゃな要求を出してきた。「打つ前に三塁打頼むで、みたいなことを言ってきた」という。そして、その通りの結果に。右中間への二塁打でイチローを還したジーターも「まさかの三塁打。それでお互いビックリした」と、試合後も笑いは止まらなかった。

 メジャー通算2552安打の9番打者と同3242安打の1番打者。自身が出塁し、ジーターに還してもらう。これこそがイチローの理想の得点パターンだった。球宴では06年から5年連続で「1番イチロー、2番ジーター」のコンビを組み、同じ時間を共有。互いの力を認め合っている。

 2人が名前を連ねて出場するのは、7月25日のシアトルでのマリナーズ戦(1番イチロー、2番ジーター)以来、今季2度目。ヤンキースタジアムでデビューし、移籍後初得点を挙げた同27日には「本当はシアトルでジーターが打って得点っていうのが良かったけど、そううまくいかないですね」とまで話していた。

 この日は2点を追う3回無死一、二塁で、今季初犠打となるバントを三塁前へ転がした。ジーターが四球でつなぎ、2番スウィシャーが逆転満塁本塁打。イチローは「本当に気持ちがいい。やらなければいけないことがはっきりしている。その分かりやすさがいい」とうなずいた。

 孤高の天才打者はすっかり常勝軍団の一員。ピンストライプのユニホームはますます様になってきた。

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2012年8月15日のニュース