虎に別れ…星野氏、次は“敵”で「甲子園に戻る」

関係者から花束を受け取り、握手を交わす阪神・星野ＳＤ

　次は敵として甲子園で――。阪神の星野仙一オーナー付シニアディレクター（ＳＤ＝６３）が１９日、大阪市内のホテルで退団会見を行った。すでに来季の楽天監督就任は決定的。この日は今後についての具体的な言及こそ避けたものの、現場復帰への熱い思いをあらためて口にした。将来的に楽天の指揮官として阪神と甲子園で日本シリーズを戦いたいとの意向も示すなど、すでに思いは仙台の地に飛んでいる。

【一問一答
】

　星野ＳＤの脳裏には早くも、自身の来季のユニホーム姿が思い描かれていたに違いない。０２年から監督を２年、ＳＤを７年間務めた阪神の退団会見。今後については「きょうはファンに感謝の意を込めた会見にしたい」と明言を避けたが、それでも燃える男は熱い思いを抑えられなかった。
　「また甲子園に戻ってきますよ。日本シリーズで。最高だろう、それは。ものすごい遠い夢だけど、それを目標にやっていかなきゃいけない」
　自身が楽天を率い、いつの日か甲子園で阪神と覇権を争う。笑顔を交えながら語った夢のようなカード実現への言葉は、事実上の「就任宣言」といえた。すでに楽天・三木谷球団会長が４日に阪神・坂井オーナーとトップ会談。１２日には星野ＳＤが同オーナーと話し合い、退団の意向を伝えたという。そして阪神の全日程終了を待ってのけじめの会見。球団や選手、ファンへの感謝の思いとともに、星野ＳＤはあらためてユニホーム、現場への思いを口にした。
　「この年になるまで野球一筋で来た。ここ１、２年、無性に野球をしたいという思いが芽生えてきた。野球人なんだな、と。私は野球がしたいんです」。阪神監督就任時には「甲子園がおれの死に場所」と誓ったが、そんな思いを振り切って杜の都・仙台に新たな舞台を求める。
　「この年齢、還暦も迎えて、険しいというのは分かり切っているけれど、そこに道があるなら歩いていかないと。戦っていかないと、と思っている」と星野ＳＤ。阪神監督に就任した際も、チームは４年連続最下位だった。楽天を阪神と同様に常勝チームに成長させ、いつの日か甲子園で戦う。「お互い切磋琢磨（せっさたくま）しながら、甲子園で出会うのが一番いい。交流戦じゃ意味がないから」との思いは本物だ。
　近日中にも正式な就任要請を経て「楽天・星野監督」が誕生する。「寂しいといえば寂しいが、私の新しい人生を突っ走ろうと思う」。闘将の新たな戦いが始まろうとしている。

　▼阪神・坂井信也オーナー　非常に感慨深い。野球だけでなくいろんなことで話していただいた。ただわれわれのエゴで引き留めるわけにはいかない。（日本シリーズでの対戦に）そうなることを願っているんですけどね。
　▼阪神・南信男球団社長　現在のタイガースがあるのは星野さんのおかげ。特に困った時、迷った時に一番頼りになる存在でした。これから心細いという心境です。
　▼オリックス・岡田監督（星野ＳＤの退団会見は）携帯（のニュースサイト）で見た。そりゃ（楽天監督に就任すれば）盛り上がるんちゃうか。