【内田雅也の追球】昨季、岡田監督がよく口にした「みんな」で臨む「青春」

[ 2024年3月28日 08:00 ]

個展初日、リーグ優勝胴上げの絵と成瀬國晴さん(阪神百貨店梅田本店)
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 阪神ファン歴75年、阪神の絵を描いて40年のイラストレーター、成瀬國晴さん(88)の個展が始まった。昨年のリーグ優勝、日本一を記念した絵画展で、会場の阪神百貨店梅田本店8階催事場は開店の午前10時からにぎわっていた。

 昨年リーグ優勝を決めた9月14日、「心を突き動かされた」と、岡田彰布監督(66)胴上げの絵を描き始め、1週間で仕上げた。さらに日本一のフラッグ授与、投手陣、打撃陣、選手個人など約30点を今年2月末までに描き上げた。

 「あのね」と成瀬さんが打ち明けるように言った。「この歳になって、これだけ描くのは大変だった。タイガースに元気づけられ、ファンとして感謝の思いを込めた」。あす29日に迫った公式戦開幕直前の開催でもあり、個展のタイトルは「さあ、みんなで今季も」とした。自身のテーマは「米寿青春」と定めた。

 「みんなで」は昨年、シーズン中に岡田監督がよく口にした言葉でもある。苦しい時に「みんなでカバーして」とチーム一丸で戦う姿勢を示していた。「みんなで」にはもちろん、ファンとの一体感も示している。

 「青春」からは<人生のある期間ではなく、心の持ち方を言う>というサムエル・ウルマンの詩を思う。<ときには、二十歳の青年よりも六十歳の人に青春がある。年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき初めて老いる>。

 現役最高齢。歴代阪神監督としても藤本定義氏64歳、野村克也氏65歳を抜いて最高齢となる岡田監督へのエールにも聞こえる。

 岡田監督がキャンプインを前に選手たちに語った「今年は勝ちたい」に闘志をみる。「普通にやれば勝てる。だから余計に勝ちたい」。2リーグ制初の連覇という理想を求める姿は青春である。

 1980(昭和55)年のスポニチ本紙、元日紙面に作家・藤本義一氏の一文がある。ルーキーだった阪神・岡田らに向け<そして、個性を失うな。そして、危険を恐れるな。そして、未知へのチャレンジを忘れるな>とエールを送っている。<さあ、行こう>と呼びかけ<青春の真っ只中に、いるんだ>。成瀬さんは藤本氏と親交が深かった。青春を謳歌(おうか)した間柄である。

 開幕が近い。「元気をもらったタイガースに元気を返したい」と期待をこめた。 (編集委員)

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