親への感謝 王貞治と村上宗隆の同じ発言がしびれる

[ 2022年9月14日 16:00 ]

巨人・王貞治(左)、ヤクルト・村上宗隆
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 【君島圭介のスポーツと人間】今まで多くの選手がその数字を背負い、目標に掲げ、そして届かなかったシーズン55本塁打。達成の瞬間を目撃する幸運に恵まれた。

 たいていは過去の記録の方が偉大に感じるものだが、ヤクルトの村上宗隆のホームランは、きっと1964年の野球ファンが感じたのと同じ興奮を味合わせてくれる。

 王貞治が持つ日本選手シーズン最多本塁打に並んだ村上のオンライン会見に参加した。そこで村上が王と同じ言葉を口にしたことに驚き、すぐに胸が熱くなった。

 今、感謝したい相手は?

 その質問に「丈夫な体に生んでくれた両親に感謝したい」と答えた。

 かつて王も答えている。

 「親からもらった丈夫な体のおかげで本塁打が打てた」

 丈夫な体とは練習に耐える頑強さ。バットを構えたまま1時間でも軸足だけで立ち続けて「一本足打法」を完成させた王は、努力は本人次第だが、それに耐える体は親からの有り難い授かりものだと実感したのだろう。

 村上も会見で「試行錯誤してしっかり自分の打撃と向き合った」と話している。王がそうだったように試行錯誤の中には何万回ものスイングや振るための基礎トレーニングが含まれている。理想が高いゆえ、納得できるほど振り込むには相当な体力が必要だ。

 加えて外傷もある。村上はその日の前日12日のDeNA戦(横浜)で、エスコバーが投じた155キロの球が右太腿を直撃したばかり。ユニホームの下には大きなあざを隠して打ったのだから説得力もある。高津監督に「試合には出ます」と直訴した村上の姿は「どんなに痛くても試合には出る」をモットーとした王と、やはり重なる。

 過酷なほど自分自身を追い込む中で、王と村上という2人の強打者は「丈夫な体」という天賦の才を思い知った。それが両親への感謝につながるのは至極自然だ。そして、その感謝の気持ちを言葉にする。成し遂げた偉大な舞台で。それは親に対しての最高の恩返しでもある。(専門委員)

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