偉大な兄のプレッシャー感じさせない「九州学院の4番」村上の全力プレー

[ 2022年8月14日 04:00 ]

第104回全国高校野球選手権大会・2回戦   九州学院14ー4帝京五 ( 2022年8月13日    甲子園 )

<九州学院・帝京五>8回、左越え二塁打を放つ九州学院・村上慶(撮影・井垣 忠夫)
Photo By スポニチ

 【秋村誠人の聖地誠論】存在感は十分だ。スーパースターの兄を持つプレッシャーなんか感じさせない。甲子園で、打って、走って、守った。どのプレーも手を抜かない。そこにいるのはヤクルト・村上宗隆の弟である前に、九州学院の4番・村上慶太だった。

 10点リードの8回2死二塁。右翼正面への打球で二塁走者の村上慶はスタートを切り、三塁を回ったところでさらにスピードを上げた。10点差があり、3アウトになるであろう打球で、だ。三塁コーチャーの合図でスピードを緩めたが「もし右翼手が落球したら」という走塁だった。常に全力なのだろう。四球で出塁した7回無死一塁の場面では、バントの構えで打者がストライクを見逃して飛び出し、一塁へ戻りきれずアウトに。明らかなミスではあるが、それも「何としても二塁へ」の思いからだった。

 チームは大会直前のコロナの集団感染で初戦がここまで延びた。難しい調整の中、4番としてやるべきことをやり切ろうとする姿勢が見えた。兄がかなわなかった甲子園1勝。でも、まだだ。「簡単に超えられるものではないと思ってる。勝ったのはいいことだけど、自分の実力で超えられるように頑張りたい」。そう言葉に力を込めた。

 兄弟選手といえば、堂上兄弟(兄・剛裕、弟・直倫)がいる。ともに愛工大名電で甲子園に出場し、プロでも中日などで活躍。戦前には中京商(現中京大中京)から全員がプロ入りした野口4兄弟が有名だ。そうした兄弟に見えるのは、互いに高め合っていく姿。兄・宗隆は甲子園に臨む弟について「必ず“村上の弟”って言われて凄く大変だと思う。一高校球児として見ていただけたらうれしい」と話した。兄の思いを受け、弟は甲子園で存在感を示した。

 ゲームセット。整列に向かう村上慶は最後の打者が残したバットを拾い上げると、相手選手に渡した。小さな気配りもできる。肝心の打撃でも6打席目、逆方向へ低く強い打球で左翼フェンス直撃の二塁打。これが本来の打撃だろう。九州学院の4番・村上慶から目が離せなくなった。(専門委員)

続きを表示

2022年8月14日のニュース